Spinach Forest

Disposable Software

Anthropic が内製した Monorepo-optimized VCS が実は Meta がオープンソースで公開している彼らの VCS のパクリであり、オープンソースだしパクるのはいいがちゃんとネタの出処を明らかにしないのはインチキじゃねえか、という指摘。

今年のはじめごろ、彼らはエーアイが C compiler を “clean room” 実装したと主張し clean room implementation を post-AGI 時代にあわせ再定義したと話題になった。同じ匂い。

ソフトウェア開発に対する無自覚な敬意のなさが剥き出しで慄く。

自覚があった上でのトロルが得意なのは近隣企業の Claudflare で、たとえば Next.js clone を vibe したぜ などと主張している。また SWE-Marathon や ProgramBench といったベンチマークは既存のソフトウェアをスクラッチで実装しなおすタスクからなる。エーアイはベンチマークがあれば強くなれるので、コード一式をバリっと作れるモデルの登場は時間の問題。Anthropic の Scion が文字通りの one-shot だとは思わないしそう主張もしていないが、精神性は通底している: ソフトウェアは安くなった。必要なものをオンデマンドで作り、使い捨てれば良い。

従来のソフトウェア開発者は「コードは安くなったがソフトウェア開発の他の部分はそうでもないからボトルネックが他に移っただけ」と主張しているわけだが、他のボトルネックも遅かれ早かれ解決される。それが Anthropic のメッセージであり、内面化された価値観である。最近のブログ記事 How the Claude Code team does code review では「エーアイレビュアがやばそうだと言ったら人間がレビューすることにしてますよ(エーアイのコードを)」と書いている。ボトルネックは解決できますよ。そんなメッセージ。

Slop PR と Agentic-CVE の大波によって多くのオープンソースプロジェクトが存続の危機に立たされているが、冒頭の Scion や CCC のような Vibe-cloning もオープンソースに対し負の圧をかけている。Pre-AI 時代であったなら、スケールする Monorepo がほしいなら Meta の Sapling を何らかの形で使うのが一つの解だろうし、そうでなくても Sapling を含む既存の SCM を改変・フォークして使うのが常識的な選択肢 (monorepo が常識的かどうかはさておき)。Sapling 自身も当初は Mercurial の代替バックエンドとして始まった。そのために必要になった Mercurial への改造は upstream され, 後に Google がその恩恵をうけ 自社 SCM に Mercurial フロントエンドを採用した。 その Mercurial フロントエンドはよりモダンな jj に置き換えられた。JJ は Google 内製 CVS 専用ではなく Git バックエンドもサポートしオープンソースで公開されて、まあまあの人気を博している。

オープンソースを通じたこうした社会インフラ(というと大げさかな?)の共有は、だんだんと廃れていくだろう。Scion を見てそんな思いを強くした。

Scion はオープンソースでない。オープンソース化する気もなさそうである。機密情報がどうとかいう以前に、あまり価値を感じていないように見える。良さそうなソフトウェアがあったら vibe-clone すればよい。相手がオープンソースであれば特に。わざわざ積極的に真似する必要すらない。真似したいところをエーアイに伝えればうまい具合にコピーしてくれる。良いアイデアは覚えてますからね。


もちろんこれはまだ少し未来の話で、vibe cloning にはまた人手による介入が欠かせない。先にリンクした記事では Anthropic の Scion を実装したチームのメンバーに Meta Sapling の元開発者がまじっていたと示唆している。

でも、パクった意識はなかったんじゃないかな。Claude Code にコードを書かせている我々の大半が training data の(少なくとも道義的な意味での)著作権違反をもはや気にしていないように。

一つだけ気になることがあるとすれば: 冒頭の Scion の記事 の謝辞では関係者がイニシャルかファーストネームでリストされている。これはフルネームを表記した他の記事(たとえば CCC のこれ) とは異なる。なにか後ろめたいことでもあるのかい?性格悪いからつい邪推しちゃうよ。