2022

短い旅行より帰宅。運転のためにキメたカフェインの都合で眠れない夜に一年を振り返る。今年は、色々なことを試したがうまくいかず、そのほかにもトラブルの多い年だった。


まず今年のはじめごろ、仕事を真面目にやって出世できないかと考えた。子を私立の学校に入れる可能性が生じ、金を稼ぎたくなったため。そこで数カ月のあいだ真面目に・・・というのは、今までと違う優先順位と労働時間で・・・働いてみたが、挫けた。仕事に頭と時間を使いすぎて業務のイヤな部分をデタッチできなくなり、精神衛生を著しく損ねてしまった。とても続けられない。

挫ける速さには我ながら感心した。自分は出世に向かないボンクラだと悟り、余暇活動でもしながら楽しく暮らそうと改心。Podcast およびブログ(これ)を再開した。労働は以前の勢いに戻した。

いちおう勤務先の名誉のために書いておくと、子供一人を私立に入れるくらいの給料は貰っている。ただバッファが欲しかった。なおこの挫折とは無関係に私立の話は立ち消えとなった。


春を過ぎたころ、いつもように HN で他愛もないコメントを書いていたら、それを読んだどこかの会社のエンジニアからメール。「おまえわかってんじゃん!ちょっと話しない?」というので、何かと思ったら hiring のお誘いだった。聞いた仕事は面白そうだしこれも縁かと面接を受けることにした。ただ冷静に考えるとコーディングクイズを突破できる気がしないので、一カ月くらい待ってもらい LeetCode で準備のうえ臨んだ。

練習の甲斐あってインタビューは通過し、いちおう VP (部長) の話も聞いとく?というので聞き、あとは肝心な給料の話かと思っていたら返事がない。つつくと会社の都合で採用全体が止まっているという。そのあとも音沙汰なく、しばらくのちに同社のレイオフを知らせる報道があった。あれまあ。さほど積極的に転職したかったわけでもなく給料がバーンとあがるなら考えようという程度の甘い見通しだったので、忘れることにした。想定給料が見られなかったのは残念だけど仕方ない。

LeetCode で転職修行するのがどういう感じかわかったのはよかった。つまり: 嫌いではないがそんなに好きでもないし、他に何もできなくて大変。日頃からコーディング筋をつけておこうかと Codeforces を試したが、早々に脱落した。あたしプログラミング向いてないんですよ・・・。


夏。二年ぶりくらいで日本に帰省したら、旅先で COVID に感染してまった。発熱など一通りの症状があり辛かったのみならず、家族の旅行を台無しにしてしまい心苦しかった。隔離施設に入ったのは、経験としては興味深かったが、十年分くらいのコンビニ飯的弁当を延々と食べさせられ食傷。とはいえ日本の COVID はその後 surge して隔離施設も満室になったと伝え聞くから、入れただけマシと言える。

帰国後 2 週間くらいは体調が悪くしんどかったものの、最終的には回復。後遺症がなくてよかった。


日本からの帰国後、妻子および自分に虫刺されらしき腫れと痒みが発生。US 帰国後に一度外泊があったため bed bug を疑って色々と対処する。この一年で一番エネルギーを費やしたものが何かといったら、これだね。害虫対策。数カ月もの間、この見えない敵を相手に大量の資金、時間、精神力を溶かした。EPA, CDPH などオンラインの authoritative なサイトを読み漁り、専門書も読み、現実的な範囲で手を尽くした。家族は皮膚科にもかかった。件の害虫の発生で説明されるような頻度での痒みは一カ月くらいで落ち着いた。家族には最近も断続的に腫れや痒みが観測されているが、そもそも自分たちはアウトドアで過ごす時間も長く家の周りもまあまあ草なため蚊など他の虫刺されと区別がつない。虫とは無関係な蕁麻疹やできものなどの肌トラブルもある。だから最低限の防御だけを残し、問題は解決したことにしている。

なお、これだけ手を尽くしたにもかかわらず bed bug の実物にお目にかかることは一度もなかった。なので、本当に bed bug がいたのかどうかは藪の中である。Bed bug は、発生しているなら高い確率で実物を目撃するとされており、多くの駆除業者は現物を確認するまで薬物散布などの対策は打ってくれない。自分の中では「当初はいたが努力によって撃退した」ということにしている。

対策と調査の副作用で bed bug に異常に詳しくなった。詳しくなってわかったこととして、オンラインの体験談はだいたいゴミである。業者もわかってないケースが多い。ぼったくり業者、役に立たない製品も沢山ある。EPA のようなまともなサイトを読もう。あと近所の方で困った際にはご相談ください。


九月。車にはねられた。いやー死ぬかと思ったねマジで。一カ月以上、体のあちこちに痛みがあった。 勤務先では春に出社が始まっていたがしばらく通勤する気が起きず、痛みが治った後を含め二か月くらい自宅勤務をしていた。先月ようやく重い腰を上げて自転車を買いなおし、通勤を再開した。

体が痛いと何もする気が起きず、仕事をなんとかこなしつつ漫然と過ごしていた。Codeforces が途絶えたのもこれ(と害虫対策の疲労心労)が一因。しかし記録をみると Podcast は続けており、我ながらインターネット芸人魂がある。


インターネットといえば、雑談相手を求め Twitter を真面目にやろうとして、挫けた。今思えば新社長就任とは無関係に単なる気の迷い、気の散り、時間の無駄だったと思う。まあ時間をムダにするのはソーシャルメディアの本質なので別にいいんだけど、自分の求めていたヒマ潰しではなかった。それを改めて確認できたのは、よかったといえばよかった。

一方で COVID 時代の友人関係のありかたは、妻子あり中年の友人関係の在り方とあわせ考えているテーマなので、何らかの形で探索・気の迷いは続けていきたい。


こうした様々なトラブルおよび雑念の影響で集中力がなく、もともとパンデミック突入以降に破綻していた労働への姿勢を立て直せていなかったせいもあって、仕事は不調だった。チームでの tenure が長いおかげで経験で目先の作業をこなすことはできたが大きな成果を出すことはできず、むしろ段々と目先の雑事の比率が増えてしまって行き詰まり、やる気も下がってしまった。これはチームやプロジェクトのせいというよりは自分の数年にわたる気の散りの帰結なのだが、そうはいってもやる気が起きない事実はどうにもできなかった。

そこで気分を入れ替えるため、社内求人をあたって他のチームに異動することにした。来年の頭から他の部門で働く手筈。仕事は相変わらずアプリ業だけれど、環境を変え気分一新で働きたい。

そういえば前回の異動も子供ができて育休をとったあと、うまく仕事に復帰できなかったのがきっかけだった。我ながら人生の荒波を乗り越えるのがヘタ。つぎの危機ではもうちょっと踏みとどまれるよう、普段から姿勢の乱れに気を配っていきたい。


総体として、外的要因および自業自得で気の散った一年だった。集中力、生産性ゼロ。特に仕事はひどいものだった。そんななか Podcast を再開できたのと、久しぶりにブログをはじめられたのはよかった。これらは、仕事の視点では気の散り要素でしかないけれど、自分の人生にとっては大事な趣味だと思い至った。趣味重要。

いま振り返るに、これらの気の散りは 1) パンデミックの何もできない内向的生活の反動と 2) 一部中年にありがちな自分探し系気の迷い (aka. midlife crisis) が重なった結果だったように思う。だとしたら、あとに禍根を残すような大きなやらかしに至らず、生産性が低いくらいで済んでよかったと思うべきかもしれない。Great Resignation と突然のテック不景気が重なって惨事に至った可能性・実例はあるわけだからね。


家庭はというと、ここに書くことは特にないけど、まあぼちぼちやってます。夫婦関係は重視したほうが良いというアイデアはそれなりに続行中。子供も元気です。

来年はこんな粗悪 reality show ドラマのない、平和な一年でありますように。

Remote And Vegan

Bill Gates が「俺はもうチーズバーガーはやめたわ」と書いていた影響もあり、食事から動物性の材料を減らせないかと時折考え、断続的に試している。

各種の plant based 代替食材も試した。Milk, Cheese, Chicken Nuggets, Ground Beef. こういうのは悪くはないが、制限されている感は否めない。

これはベイエリアで日本食材スーパーに言って感じる残念さに似ているかもしれない。悪くはないが、本質的に制限されている。それよりは Safeway なり TJ なり、そのへんのスーパーで買える材料で、アメリカっぽい料理を作ったほうが良い。材料は安く、豊富である。バター多すぎだが。日本ぽい食事はアクセント程度にしておく・・・というほど制限してはないけど、アメリカっぽい飯の割合はだいぶ増えた。

同様に、動物性食材を減らそうと思ったら代替食品でがんばるよりも Vegan レシピを覚えたほうがいいなと考え直し、Vegan Recipe の YTer をランダムに何人かフォローしてみた。もうちょっと増やしたい。Vegan Recipe 勢、基本的に alternative ingredients は使わない。野菜と豆で生きている。植物性の材料から旨味やコクを最大化するノウハウを追求している。

日本飯からアメリカ飯へのシフトにせよ動物性から植物性へのシフトにせよ、それまでと同じ料理を代替材料で作ろうとするよりは作る料理そのものを置き換えたほうがストレスが少ないし、探求の楽しみも増える。

これはパンデミック突入にともなうリモートワークへのシフトの時に感じた印象と似ている。つまり in-person のアクティビティを、そのままオンラインに持っていくのはしんどい。

いちばんわかりやすいのはミーティングで、今は zoom fatigue と呼ばれるに至った。ただ個人的には in-person のミーティングそんなに好きでなかったし、パンデミック前から違うオフィスのひととは VC だったので、いきなり制限された気はしていない。まあ 1-1 とかは in-person の方がいいといえばいいかもしれない。


より滑稽・・・というと悪意があるみたいだけれど、うまくいかないと感じたのは “virtual” team building event みたいなやつで、これはほんとうにしんどい。物理的に近接することで深まる bonding が欠落している。McPlant 的な空虚さがある。

ずっと感じるのは all hands や tgif のような発表主体のイベントのリモートとの相性の悪さ。おそらく主催者・登壇側は拍手喝采されるアゲ感が名残惜しくて無意識にこのフォーマットを支持、維持しているんだろうけど、視聴者からすると発表やアナウンスを伝えるメディアとしてこのフォーマットは疑問。

自分の勤務先はでかいので、この手のイベントに実際に足を運ぶことは随分前からなくなっていた。基本的には録画を見る。そもそもオフィスが離れていたら足を運びようがないわけだし。これらがライブ開催される意義は、歴史的にはリアルタイムで参加者から質問に答えられるからだった。けれど地域格差を解消するために、今は事前にオンラインで質問を募っている。視聴にとってライブ開催の意味は、もはやない。

発表者が自宅からライブ・録画していたパンデミックピーク時は更に厳しくて、たとえばさ、社長とか VP とかがすごい立派な部屋を背景に話をした直後に下々が狭いベッドルームやごちゃっとしたリビングとかを背景に登場したりするわけ。はー我々ザコキャラはカネ持ってる資本階級にコキ使われてんだなーと冷めた気分になってしまう。現実には社長や VP が狭ーい部屋から登場したらその方が夢がなくてイヤなのだが、そういう格差は普段から目にしたいものではない。会社の建物はチームの一体感というファンタジーを維持する装置として機能しているのである。幻想重要。

なんの話だっけ。そうそう、発表の類。これは、きちんと編集したコンテンツとして出すのがいいと思うんだよね。司会もプロを雇う・・・までいかなくても得意な人にやらせてさ。ついでにいうと、情報量を考えると動画じゃなくて音声でいいね。Podcast にしてほしい。その方が編集の手間と効果の費用対効果も高いでしょう。新機能の発表とかもさ、一人で話させるんじゃなくてインタビューにしてあげるわけ。それがリモート時代の broadcast というものじゃないか。

自分のいるチームでは、あるとき有志が思い立って「同僚をインタビューする Podcast」を初めて、これがすごくよかった。同僚といってもランダムに選ぶのではなく主要な、つまりエラ目、存在感高めの人が中心。内容は仕事寄りでなくその人の生い立ちとかそういうパーソナルな話が中心。物理的な近接が担保していたある種の intimacy を、録音されたメディアを通じ人となりを知るという intellectual exposure で置き換える。リモートファーストの team building かくあるべきな見本として額に入れて飾りたいくらい。

いちおう勤務先全体を擁護しておくと、たとえば会社の動向を伝える newsletter みたいなやつは存在していて、毎日届く。これは良い。会社全体に限らず、組織がでかくなると、この手の newsletter は様々なレイヤで発生する。基本的にはレイヤが下になるほど仕事の具体的な内容に近くなる。そういう written communication があるのは良い。もっと普遍的になればいいのにと思う。


個人的には、特に組織の雰囲気とか文化みたいのを形成するのには、リモートであってもテキストに固執する必要はないと思っていて、だからこそ internal podcast は良いと思ったのだった。動画はどうかというと、本来は色々やる余地はあるはずだが Remote Techtalk とか、やっぱりいまいちだよね。もうちょっと YouTube / TikTok / Instagram とかなんでもいいけど動画メディアというものを研究して工夫して欲しい。動画は音声より production cost が高いのは事実なので、そこは会社が支援して上げるのが良いと思う。スタジオ作るとか、機材手当を出すとか。

Automattic や 37signals はテキスト世代の remote first 企業だった。パンデミック以降の若い remote first 企業がどうやって社内でコミュニケートしているのかは興味があるね。

Tumblr

Mastodon が隆盛している昨今。別に嫌いではないし恨みもないが、めんどくさい。気分が盛り上がらない。UX がしょぼすぎる。

Tumblr が ActivityPub をサポートするというので、これが公式にアナウンスされたら Tumblr as Mastodon frontend として使うのはいいかもしれないなあと思いつつ、発表を待っている。Tumblr は Marco Arment が CTO をしていた過去に加え WordPress の Automattic に買収されており、なんとなく親しみを感じてしまうのだった。おっさんの巣窟になっているかと思いきや、上のインタビューによれば未だに若者を引き寄せているらしい。中二病の巣窟か。サブカルだよな。


Automattic, 個人的には金銭のしがらみがなければ働きたい会社ナンバーワンである。そのラブリーな製品リストを見よ。まあ勤務先の製品群もそこそこラブリーでたくさん使ってるんですけどね・・・飽きたよね・・・あと For Everyone とか言っててサブカル感がないよね by design・・・。

さすがにこのご時世 open position はないっぽいなと求人ページを眺めていたが、上の podcast を聞いていたら Twitter layoff 勢向けに専用のページが用意されていると聞き笑ってしまった。ソーシャルメディアの会社は、景気悪いなりに ex-T の人々を雇っていそうである。Twitter layoff のいいところ(?)は、クビの切り方が明らかに雑なのでクビ = low-performer という負の印象がまったくない点。会社の人事評価なんてどのみち当てにならないので採用側は不当な bias なしに人を見てほしいもんだけれど、そういう「正しい態度」は期待できない不景気なのだった。


レイオフといえば、最近大規模解雇をした会社から「採用してるよーどう?」みたいなメールが来て、おまえらどうなんだそれは・・・。という気分になった。配置転換みたいな概念はないのかね。おまえらがクビにした low performer はほんとに low performing だったのかい・・・マネージャがダメだった可能性はないのかい・・・?

Stratechery Plus

少し前から Ben Thompson の Stratechery Plus を sub している。テック業界分析有料 newsletter+podcast. 自分はもともと Dithering に金を払ったり払わなかったりしていたが、Ben Thompson の他の podcast とセットで割引されるというので sub してみた。$12/m は個人メディアとしては安くもない一方、Stratechery はこのジャンルだと老舗かつ最大手なので、こんなもんかなと思う。

さいきん他所の podcast でインタビューされており、10 周年だと知った。自分はいつから聞いている(というかブログを読んでいる)のか覚えていないが、最初の頃はビジネス臭というか PM 臭がキツすぎてそんなに好きでなかった。今もテクニカルな細部への洞察は怪しいなと思っている。ただ Ben が友達の James Allworth とやっていた Exponent という podcast を聞いていたらにじみ出る personality に親しみが湧き、だんだんと読むようになった。(なおこの podcast は二年くらい前に終わってしまった。Big Tech が世を席巻している時期のその様子に fascinate する暑苦しい対話で、自分の podcast 視聴歴のなかでも favorite のひとつ。James 帰ってきてくれ!)

Ben Thompson の主要コンテンツである Stratechery は blog。Paywall はない。有料会員はこれに加えて daily update というテック業界短信が週に二回くらい読めるほか、週に一回テック CEO のインタビューが配信されてくる。このインタビューは大手からスタートアップまでほんとに隈なくたくさんの CEO がインタビューされていてびっくりする。大きいところだと Meta, Microsoft, NVIDIA, Intel の CEO が出てきたり、最近だと Midjourney の CEO もインタビューされていた。たぶんこれがキラーコンテンツ。

あと Sharp Tech というゆるっとした業界解説 podcast と John Gruber とやってる 15 分でおわる業界短信 podcast Dithering. このへんは相対的にはどうでもいいが、ちょっとしたヒマつぶしにはちょうどいい。ただしどちらもだいたい同じ時事ネタを話してるだけなので、両方聞くと飽きる。最近は Ben が出てこない Sharp China という podcast が追加された。これはアメリカテック業界人が気にしてる中国事情の話をしており、バリエーションになってよい。ただ個人的にそこまで興味のある話題ではないので、継続的には聞いてない。

それにしてもこんな個人アナリストがテック大企業の CEO にばんばん一時間くらいのインタビューをしていて、Ben Thompson は随分と大物なのだなとびっくりした。先の 10 周年インタビューを聞くとピンで食っていきたいアナリストワナビーの星らしい。昔はそんな大物じゃなかったはずだけど、10 年続けるなかで着々と影響力を伸ばしてきたのだね。


というかんじで二ヶ月くらい購読しており中身に不満もない。ただ Stratechery Plus だけで自分の音声コンテンツの帯域が使い果たされてしまい Audiobook の進捗がすっかりなくなってしまったのは問題。一旦 unsub して音声読書を進めたい気もするが、どうしたもんかな。