Book: 半導体尖端覇権の興亡
読んだ: Amazon.co.jp: 半導体 尖端覇権の興亡 eBook : 大鹿靖明: Kindleストア
日本の半導体周辺産業凋落の歴史。なんとなく 20 世紀で敗北していたと思っていたがメモリとかフラッシュなどは 21 世紀でも序盤は頑張っていて、しかしこの 20 年で負けてしまったねという話。Chip War" (邦訳 “半導体戦争”) や “Apple in China” を読むと、日本はチラっと出てきたあとすぐ敗北退場してしまう。この本は退場したあとどうなったという話で興味深い。自分は、何も知らなかったね。関心も払っていなかったし。
日本はいわゆるメーカーが垂直統合なせい半導体産業が分散しており、規模で戦う局面についていけなかったのが敗北の主要な原因だと著者は分析している。政府が介入してデフラグを試み、ルネサスだのエルピーダなどがあったがあまり上手く行かず、ルネサスはまだあるがエルピーダは消滅(買収)。あとキオクシア(なんかゴタゴタしてたが最近はエーアイ景気で復活)などなど、色々あったのだねーと勉強になった。そうした産業構造の問題ではなく、サブプライム直後の円高(当時は日本の銀行が手堅かったのでドルが逃げてきた)で価格競争に負けて滅びたり、地震のせいで工場が壊れてそのまま破滅したり、踏んだり蹴ったりの様相。
赤字やらなんやらで国内産業が中国にどんどん買い取られていく様は Apple in China の日本版というかんじで趣深い。仮想敵国にこんなにバンバン国内技術を売り渡して全然ブロックされないとは、昔は平和だったのだね世界は。完全シフト済の現代 Overton Window から見るとドン引きしてしまう。
前半八割くらいがそんな凋落の話で、あとの一割が TSMC 熊本進出の話。そして最後の一割がラピタスの話。ラピタス、こないだ北海道旅行をしたときに話をきいてへーと思いつつスルーしていたが、IBMの技術をベースに税金投入してファブを作る、客はこれから探す、みたいなめちゃ掛け金高くて歩の悪い博打を打っていると知りビビった。日本で 2nm? ほんとに? ASML の機械が搬入される下りとかもう読んでいて胃が痛い。
「覇権」やら「戦争」やらの表現が示すように、TSMC もラピタスも金稼ぎではなく保安上の施策なのだよね。アメリカ政府が CHIPS Act で Intel や TSMC に出資したようなもので。なので分が悪いのはある程度織り込み済みと言えるが、こんなカードしか残っていないとは・・・と悲壮な気持ちになる。空前のエーアイ景気の勢いで客を掴んで起動に乗せられるといいですね、ほんとに。Intel も Apple や Google から fab として発注を受けるという前代未聞の展開が続いており、政府の圧力もあったろうけれどそれ以上に TSMC だけじゃ帯域が足らんという話なわけで、全てエーアイのおかげ。日本も恩恵受けてほしい。
少し前に Substack あそびとして Noah Smith を購読していたら “ウィーブが日本を救う” という本の抜粋がアーカイブにあったので目を通した。Noah Smith は TSMC 誘致みたいな FDI (Foreign Direct Investment) で中国がやったみたいに発展途上国プレイをして経済復活だ、みたいな話をしており、日本そんなキャラじゃくね・・・と思っていたが、今となっては妥当 (less worse) なカードなのかもしれない。この本を読んでふと思い出した。