Spinach Forest

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最近聞いた本

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Chip War by Chris Miller

半導体産業の歴史。

軍事側の進捗の話が多いのは民間人である自分には面白い。たとえばイラン・イラク戦争でのミサイル精度はシリコンの進歩によるものだったという話など。日本もでてくるが、隆盛ののち消えていく。めちゃアメリカ視点なので、日本の半導体談義にあるような細々した話はない。それは腹立たしい気もするが、負けるというのはそうことなのだろう。

あとベイエリアすなわち「シリコンバレー」の地名が全編を通じてずーと出てくるので、住んでる人的には地元ストーリーとして読める面白さがある。え、Fairchild って Mountain View にあったの? みたいな。

最近なにかの podcast で、 OpenAI からのタレントの離反は半導体史初期の Fairchild からの離反に似ているという指摘があった。そんな歴史の一幕を振り返るのにも良い。昔から一山当ててリッチになりたい人々の土地だった。

Nickel and Dimed by Barbara Ehrenreich

いわゆるワーキング・プアの本 (The Working Poor という本は別にある)。ジャーナリストの著者が、取材のために本業を隠し、低賃金労働で働きながら暮らしてみる話。住居を含む生活も、その仕事からの収入だけで賄おうとする。

・・・が、賄えず何度もゲームオーバーになる。暮らせねーじゃねーか、というのが趣旨。

20 年以上前に出版された本で、以降アメリカの貧困が改善されたという話は特に聞かないので、今日どうなっているのかには興味がある。特にインターネットの普及は貧困生活者にどういう影響を与えたのだろうか。Gig Economy とか。必ずしもいい影響があったとは思わないが、何らかの影響はあるはずじゃん?

100 Best Books of the 21st Century から選んでみた一冊。

Dopamine Nation by Dr. Anna Lembke

定期的に読んでしまう依存症関係の本。著者は依存症クリニックの医師で、様々な依存症エピソードが紹介されている。第一弾からしていきなり自作の自慰機械をやめられない男の話。ドギツい。意外にもインターネットや電話の話はない。

最終的には依存症脱出のガイドみたいので話が締めくくられている。方針としては Alcoholics Anonymous (AA) みたいな方向性を推しており、ああいうのってカルトというわけでもないのだなと感心を新たにする。

依存症の話が気になる人には面白い一冊。

The Anxious Generation by Jonathan Haidt

子供にスマホ持たせんな、持たせるとしてもソーシャルメディアのアカウントを作らせんな、学校はスマホ禁止しろ、という本。大人は子供のオフラインライフには過干渉なくせにオンラインライフにゼロ干渉なのはおかしいだろう、そこの釣り合いを見直せと説く。そうですねーという感想。

めちゃ売れているらしく、ついでに California では学校から電話が ban されるらしい。まあ学校ではいらねーだろ電話。School Shooting などの emergency のために持たせたい親が多いとリンク先の記事にはあるが、銃撃されてる子供を電話で助けられるんですかね・・・?

The Ultimate Retirement Guide for 50+ by Suze Orman

年金とか保険なーんもわかってねーな、ということで。なーんにもわかってない身で聞くと informative であった。ただし結構アグレッシブにいろんな金融商品を勧めており、そのへんの妥当性はあまりはっきりしない。たとえば Income Annuity とか Long-Term Care Insurance とかほんとにいるの?(後者はそのうち必要っぽいな・・・)など。

まあ知識ゼロな身として starting point にするのは良い本なのではないだろうか。Audiobook は著者自身が読んでおり、かつ著者は TV personality だったらしく、喋りに謎の力がある。そういう読みの勢いで話題の本質的な退屈さを紛らわせている。反面として関西弁のおばちゃんステレオタイプみたいな喧しさは否めないが。

Hyperfocus by Chris Bailey

定期自己啓発生産性図書。集中力ライフハック集という風情で割と良かった。Cal Newport のような micro-celebrity-cult を志向せず(きらいじゃないですけどね)実用的なのがいい。


我ながらろくでもない本しか読んでないねー・・・ろくでもなくない本は、だいたい聞き始めたあと挫折しています。

Book: Exit Interview: The Life and Death of My Ambitious CareerBook:

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https://www.amazon.com/Exit-Interview-Death-Ambitious-Career/dp/0374600902/

2006 年に Amazon に管理職として入社し 13 年務めたが一度も出世できなかった女性の手記。「女性」というのは余計に見えるかもしれないが、出世できなかったのはガラスの天井のせいだと主張しているので、重要。

奇妙な本だった。面白いかというと、面白くない。NYT のレビューを読むと Amazon におけるジェンダー差別を告発する本を期待するし、そういう面はあるのだが、基本的には著者の半生記・・・とまではいかないけど、memoir なのだよね。でも特になにかを成し遂げた有名人というわけでもない管理職の memoir とか別に面白くないわけです。

読者(自分)は Amazon に興味があるわけで、著者には興味がない。けれど内容は自伝。Amazon 勤務を描いた自伝なので Amazon エピソードは満載なのだが、それがメインではない。メインは著者。そっち興味ないんだけどな・・・。

Amazon エピソードだと、たとえば新製品発表時の Bezos のメッセージを代筆し、そのレビュー会議に出る話だとか、管理職として骨のあるところを見せるために部下を PIP するエピソードとか、まあまあ面白い。

ジェンダー差別告発パートはどうかというと、残念。出てくる男たちは次から次へとクソ Jerk ばかりで著者が気の毒になるのは確かだけど、Jerk で差別的な男というのは別に Amazon に限った話ではない。Amazon 固有の、もっといえばテック産業固有の問題をうまく描いてほしかったが、自伝という性質もあり視野がミクロで、構造的問題をまったく捉えられていない。

著者は non-tech 出身で、Amazon でも製品データの入力や商品紹介テキストの管理など tech 隣接部門からキャリアをスタートしている。しかも管理職。他の Amazon/Tech 告発本にはない視座を持っていたはずなのに、それが生かされることはなかった。Tech 企業における non-tech 人員の割の食い方とか、テックにおけるジェンダーバイアスの象徴としていくらでも書くことあったと思うんだけど。

結局は、著者は Amazon が、あるいは Amazon で働きあげた自分が好きなのだろう。文章からそれが伝わってくる。だから Amazon を糾弾しきれない。そもそも Amazon は話の主役ではない。だから Susan Fowler のような切れ味も洞察もない。Susan Fowler と比べるのはフェアじゃないっちゃそうなんだけど、本当に Amazon に一矢を報いたいならポエムっぽい自伝の片手間じゃダメだよね。

なおその自伝パートはどうかというと、基本的には面白くない。ただ野心的で貪欲でワーカホリックなアメリカ人会社員の心情が下手に美化されるることなく赤裸々に語られており、そこはある意味好感が持てる。ストレスのあまりアル中になりかけたり、ストレス対策のヨガが物足りなくなってランニングに切り替えたら足を痛めたり、高いカバンを買わずにいられなかったり、生々しい。(なおアル中は無事回避できたらしく、それをネタに書いたデビュー作の本が割と売れている。こっちの方が面白いかもしれない。読まないけど。)あといわゆる「理解のある夫」氏がでてきて、その扱いの軽さに男性の書くキャリア読み物に見られる配偶者の扱いの軽さを重ね合わせてしまうわたくし。

まあそんな本です。生々しいエピソードとツッコミどころは多いので、そういうのが好きな人はどうぞ。そういえば Audible は本人が読んでて、生々しさと痛々しさが良いです。

追記

Amazon レビューをみるとすこぶる評判が良い。似た境遇の人には響くらしい。おっさん向けの本ではなかったということですね。

発病活動 - Understanding SQL and RDB

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もうちょっとデータベースというか RDB なり SQL なりのクエリの実行というものをきちんと理解したい気がする。DuckDB をいじっていた時に感じた物足りなさ、覚束なさや ZetaSQL を読んでわからない感じは、そういうリテラシの不足に起因している気がするので。

データベースといっても B-Tree みたいなストレージの話やトランザクションなど話題は色々あるけれど、ここでの関心はクエリの評価。結局自分にとっての SQL は Dremel や BQ のような OLAP で、そこで SQL という宣言的なクエリがデータを読むコードになって評価される魔法を理解したい欲求がある。

というわけで問題を理解するにあたり必要なことを考える。

  • 教科書を読む。長くてかったるいのでできれば論文を読んで済ませたいが、どうかね。大学のコース資料をいくつかあたって、必要な reading list を作るところからスタートだろうか。
  • しょぼい toy query processor を書く。オンメモリのデータか、ごく単純なフォーマットのファイル (mmap で使えるようなやつ) を相手にいくつかの素朴な代数的クエリが書ければよい。といってもそれなりに難しそうだけど。

しかしデータベースとか何で書けばいいのかね。C++ とか Java とかが堅いのはわかるが、そんなもの課外活動で書きたくない。一方でさすがに Python とか JS とかいう類の題材でもない。モダンプログラマなら Go なり Rust なりで書くんだろうけど。いい機会だから Rust 軽く勉強しようかなあ。全然本題が進まなそうだけど・・・まあ本題が進まなくても Rust を触れるならそれはでいい気はする。query processor 書きは題材ということで。

つまり、昼休みは RDB の教科書なり論文なりを読み、朝は Rust のチュートリアルをやる。これだな。可視化の教科書は読みかけだけど中断。SQL/RDB に詳しくなる方が楽しそうなので。課外活動は中断挫折を気にせずやってきます。

週例活動 - 図鑑探し

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今日は weekly review という名の雑用の日です。Weekly Review のテンプレを Notion に移行しなければ・・・とおもったがそういうことをしてると作業が進まないので何はともあれ家計簿でもやりますわ。はい。

ところで WP.com は xxx.wordpress.com の XXX が選べなくなって、いよいよ実質上有料といった風情。別にいいけど、時代だねえ変えられた。日本のブログサービスは滅茶滅茶いろいろあって、よく続いてるよなあ。ブログ大国といってよいのではないか。一方日本語で「ブログ」で検索して出てきたサービス紹介のブログ記事は Medium は載ってないし(まあそれはいい) WP の紹介は間違ってるしで、ブログというものの現状をよく表している気がする。

Disnesy+, 1-2 本みればだいたい元が取れるが、最近ほんとにスクリーンを見な過ぎてこれですら元が取れていない・・・。

Todoist に「日本語のサイエンスっぽい本を探す」(子向け)というタスク。自然科学ね。図鑑だとモノは列挙されているがいまいち説明がないのでは…というような話をしていたのだった。しかし図鑑いまいち説が事実なのかをまず確かめようではないか。図鑑に迷ったら!図鑑最新情報&おすすめ100選! | 絵本ナビスタイル とか見る限りでは事実な気がする。

「植物」というカテゴリに絞った時点で図鑑になってしまう?もっと生物の読みものとかで探すほうがいいのではないか。それとは別に図鑑もあっていいと思うけど、日本語だと日本の植物の図鑑になってしまうのがなあ。それ生えてねーっつーの(言いがかり)。植物図鑑は英語でよくないですかね・・・。

といったところで 1-2 冊リストに追加のち時間切れ。書店にアクセスできない厳しさ。

Book: The Second Shift

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著者 Arlie Russell Hochschild のファンなので聴いた。共働きについて書いたある種の ethnography で 1989 年に書かれている。

ある調査が明らかにした「共働き夫婦では女性の方が年間で一か月分くらい長く働いている」という事実を受け、女性は昼間に最初のシフトで働いた後家で二番目のシフトで働いてますよね、というタイトル。

本書は、まずフィールドワークで出会った 7 組の共働き夫婦を詳しくインタビューし、彼らがどのように家での労働を分担しているか(していないか)、それを夫婦それぞれはどのように受け止めているかを、夫婦ごとに章をわけて書き下す。これらの夫婦は、それぞれ異なるタイプの関係性を捉えていて、それぞれに面白い。

最初の数章は、前のインタビューや他の調査をうけ、働く女性の置かれている望ましくない身分を社会的背景の中に位置づける。

30 年以上前の本だが、夫婦のあり方とか今でも普通にありそうな話で、あんまり変わってないのかな、と思った。もちろんそんなことはなくて変わったことも沢山あるのだろうけれど、7組の夫婦のあり方が、どれも少しずつ自分の身と重なって他人事でない。自分はフルタイムの共働きじゃないんだけれど。2009 年に出た二版で追記された部分でも、調査の結果の変わらなさについて少し触れている。

安直なフェミニズムの本は男たちを大声で糾弾してうさを晴らしがちだが Hochschild にはそういうところがなく、見たものを描き出すところに注力している。そういうプロの社会学者の仕事が好き。


自分は、フルタイムで働いていた奥様に仕事をやめてもらってアメリカに引っ越してきて、 それでも奥さんはまたフルタイムの仕事をみつけて働いていたのに、 子供がうまれて一年したくらいで共働きは大変すぎると再びフルタイムをやめてもらい、 奥様は今はパートタイムで働いている。 働く女性を disempower しまくっており、我ながらろくでもない。 色々言い訳はあるが、言い訳でしかない。返しきれない貸しを抱えて生きている。

仕事を奪うというのは、収入を奪うとかやりがいを奪うみたいな面もあるけれど、それ以外にも金を稼ぐ能力を奪う、つまりある独立する力を奪う面があって、それが罪深い。自分は高校生の頃に父親が死んで、母親がフルタイムで働いていたおかげで無事大学まで行けた。そういう経験があるので、人は結婚してもちゃんと金を稼いでいた方がよいと割と心の底から思っていたはずだが、それを自分の結婚では実現できていない。Hochschild も終章近くで “The Working Wife as a Urbanizing Peasant” と書いており、根にある問題を同じように捉えているのが見て取れる。

自分の勤務先とかこのへんの tech worker だと移民でもない限り tech 共働きは割と普通で、そういう夫婦はだいたい nanny をやとっている。そうやって家事を outsource するのが、たぶん現代の(金のある)夫婦の主要な問題解決だと理解している。Nanny を雇う話は本書にも少し出てくるが、主要なツールとみなされている様子はない。なんとなく、それが 30 年の変化なのかなという気がする。

Hochschild は、nanny もまた親であり、そうでなくても nanny というのは low-paying job で、しかし/したがって nanny の子供を見てくれる nanny はいないという事実を指摘する。つまり nanny を雇うのは性差の向きに仕事を押し付けるかわりに経済力の向き(それはだいたい人種の向き)に仕事を押し付けることである。アメリカ的。この話は前によんだ他の人の本 にも出てきたのを思い出す。Hochschild もその後に書いた本で近い話題を扱っているらしいので読んでみたい(が Audible がない・・・)


自分の結婚生活の(政治的)正しく無さについて考える。そういう正しさを自分はそこそこ重視していたはずだが、なぜまたこんな有様なのだろう。

と考えると、結婚というものに心の準備ができてなくて、今でもできていないままなのだろうね。独身の若いうちから「結婚したい、子供が欲しい、こういう家庭をつくりたい」と願ってイメトレするというか、それについて考えることに時間を使ってメンタルモデルを作っておかないと、結婚して子供を持つというドラスティックな変化に備えるのは難しい気がする。割と早いうちからスッと結婚してめでたくやっている数少ない友人たちのことを思い浮かべると、程度の差はあれそういうパーソナリティを持っている。

ただそういう心構えって、ある程度現実が伴っていないと厳しいよね。つまり結婚できそうもないのに結婚するつもりで生き続けることはできないじゃん。

自分も大学生の頃くらいまではそのうち結婚とかするのだろうと曖昧な見通しを持っていたが、会社員になって早々に自分は結婚とかできなそうだな・・・と思い至った。落胆したが、同時にすごく心が軽くなったのも覚えている。叶わない願いを持ち続けなくていいと気付いたから。結婚しない、どうせできないからするとかしないとか気にしなくていい、と決めて暮らすのは、自分の精神衛生には必要なことだった。

自分にとって結婚は unlikely outcome だった。だから心構えができていないのは仕方ない。事後的にできる範囲で方向転換しつつ、残った正しくなさは受け入れるしかない。

返しきれないこの「正しくなさ」のせいで家庭が崩壊する心配はしていないけれど、結婚生活というもののポテンシャルを完全に引き出そうと思ったら若いうちから心の準備をしておく方がよかったのだろうなあ。でもそういう青春時代を過ごす並列宇宙の自分を想像するのはとても難しい。一ミリも想像できない。

Book: Women's Work

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Women's Work: A Reckoning with Work and Home

The Decade of the Parenting Manual - NYT Parenting で紹介されていたので読んでみた。ここにある本は半分くらい読んでおり我ながらサヨリべすぎて苦笑。そしてマニュアルではなく読み物ばかりだな、このリスト。

この "Women's Work" も例にもれず子育てガイドではなく読み物だった。著者自身の Memoir. もともと新聞記者の海外特派員だった著者が中国(北京)で妊娠し(配偶者もジャーナリストとして一緒に中国にいた)、新聞社の仕事をやめて子育てしながら本を書いてライターとしてのキャリアを続けようとする。しかし非協力的な夫を通じてジェンダー格差の現実に面し仕事が進まず、仕方なく nanny を雇ってみたら今度は中国の貧困やジェンダー格差に加担している自分に気づき思い悩む、という話。途中で第二子が生まれ、そのタイミングで夫の仕事の都合にあわせインド(New Delhi)に引っ越す。そこでまた nanny を雇い、同じ悩みを繰り返す。

ここで終わると傲慢なアメリカ人のうざい独り言なのだが、後半ではジャーナリストとして過去に自分が雇った(そのうち一人はクビにした)nanny に会いに行ってインタビューをする。そこは面白い。自分が employee として見ていた nanny たちのおかれた現実をジャーナリストとして revisit する著者の倫理的葛藤みたいのがよく書けている。

あと「うざい独り言」はやや言い過ぎで、自分も外国で子を育てている手前、そこにはある種の共感があった(インドに住むアメリカ人と比べるとカネの力で殴る経済力はないが)。そして自分はジェンダー格差の受益者なので、著者が夫にブチ切れるところでは胃が痛んだ。この手の本にでてくる夫は割とみんなひどい気がするのだが、自分がそうでないとなぜ言えよう・・・。

Amazon のレビューを見ると "White Privilege Horror Show" という批判がある。でも著者はそれに自覚的で、けれどその傲慢さを隠さない正直さみたいなのが面白いと思う。自分も読んでいる途中で著者のアメリカ人っぷりに笑ってしまう箇所がいくつもあった。書き手としての「声」がある点で「正しさ」に塗り固められた Lean In より個人的には好ましい。声といえば audiobook の narration はその鼻持ちなら無さを完璧にとらえており、最近きいた audiobook の中では最高峰の出来。


子供ができたら親である自分のキャリアは終わる。それは仕方ない。理由はどうであれ、多くの母親が仕事を辞め専業母親化する事実がそれを伝えている。そうしたコストの fair share を引き取ろうとしたら、定時強制の化石技能な万年末端になるくらいは妥当。理屈ではそうわかっていても、日々の impluse がしらずしらずのうちに privilege を claim してしまう。たまにこういう本を読み calibrate していきたい。

Book: Zero To One / The Startup Way

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割と良かった。スタートアップは陰謀論でカルトなんだよ!と衒いもなく言い切る政治的正しく無さといい、なにかと引用される文献が渋いところといい、ファンもアンチも多いのがよくわかる。過剰なかっこよさ。あと薄いのも良いね。個人的には、世界の秘密を暴けるような仕事がよいという下りがよかった。


リーンスタートアップどういう話か忘れてたのでいい復習になった。ちゃんと innovation accounting してる企業がどれだけあるのか見当もつかないし大企業にそれを売り込める気もまったくしないが、シリコンバレーの会社というのはこういうのを読んだり本物のスタートアップで体感したりした下々が草の根的に存在するので、上の方が雑でも少しはスタートアップ・ウェイがまじりこむのだろうなと思った。

Amazon のレビューを読むと「風呂敷広げすぎ」「よくある企業改革論」みたいな批判が目につく。まあそうなのだろうね。アイデアは Lean Startup から変わってない気がするので。


こういうビジネス書を読んではなくそほじりながらフンフンとかいってるあたり我ながらおっさんだなー。ちなみに actionable な要素は特になし。

Antisocial

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Antisocial: Online Extremists, Techno-Utopians, and the Hijacking of the American Conversation

Alt-right や white supremacy と呼ばれる人種差別的インターネットトロルがソーシャルメディアなどを駆使しいかにオンラインの言論を制圧したかを書いた本。

よく取材しており、自分のように alt-right とかそういうめんどくさいものは目にもしたくないし目にする機会もない外国人にとっては現状を追体験できる優れた読み物だった。オンラインのメディアを熟読のうえ色々引用してくれるだけでも(話題の性質上)臨場感があるが、それだけでなく Alt-right 方面のブロガーに密着取材(本人の許可を得たうえであちこちに同行する。ホワイトハウスにまでいく。)してみたり、そのカルトを抜け出してきたインサイダーにインタビューをしたり、Reddit の CEO にも取材をし、同社が利用規約変更の日の社内 war room に入り込んでレポートをしたりで、始終読ませる。

著者は The New Yorker という伝統的左メディアの人間で、ソーシャルメディアみたいなテックの連中は disrupt とかいって従来の gatekeeper を駆逐したけど、それでいいんですかね?やっぱり何らかの gatekeeper 必要だったんじゃないんですかね?とたびたび問う。自分は著者の批判する techno-utopian の末席におり、この主張にはほぼ脊髄反射のレベルで鼻白んでしまう。ただ social media は逆戻りのできない社会実験の失敗だったいう確信は深まった。社会として有害なものが歴史の成り行きで消えない傷になる例は過去にも色々あるので(タバコとか)、それ自体は仕方ない。ただ社会としては失敗に合意のうえ move on してほしい。時間はかかるだろうけれど。

著者はトーマス・クーンを引きながら paradigm shift の話をする。そして alt-right のメディア戦略の根底にあるアイデアとして paradigm shift のインクリメンタル・バージョン Overton Window が繰り返し言及される。Alt-right による window-shifting に著者はしつこく警鐘をならす。

自分はアメリカの思想的シフトよりソーシャルメディアの先行きの方に気をとられている浅はかな techno-utopian なので、同じ文脈で social media という社会実験の精算について思いを馳せてしまう。つまり social media が有害であるというアイデアは新しい paradigm として世代が進むにつれ常識となり、まともな現代人の大半がタバコを吸わないようにまともな大人の大半がソーシャルメディアをやらない時代がくる、という形で実現される・・・と予言できる確信はまったくないけれども、実現されるべきだと思う。トーマス・クーンがパラダイムシフトのドライバを世代交代で説明したように。


なお自分はブログがソーシャルメディアと比べて本質的にマシだとは思っていない。ブログはインターネットにおけるブロードキャストのシステムがソーシャルメディアに向かう未完成な通過点で、その未完成さゆえに致命傷を逃れた・・・というかダメージがちょっとマシだった。(それでも致命傷には至っているかもしれない。)

インターネットをつかい friction free で voice を broadcast するというアイデアが根本的なヤバさを孕んでいる。人々が private messaging のような non-broadcasting media に流れているのはその煙からの避難なのだろう。逃げた先がマシかは誰にもわからないが、ここが燃えているのは誰の目にも明らかだから。

Zuckerberg とかは明らかにこうした時流を理解しており、だからこそ private messaging へのシフトを急いでいる。一方で Antisocial の著者が激しく批判する free speech の擁護を改めて打ち出してくる。Zuckerberg の中指的態度は Ukraine での密談を突き上げられ開き直った大統領の態度とどこか共時性がある。

NYTimes は 大統領を reckless, Zuckerberg を defiant と評しており、ほんとにそう思う。そして reckless なほうはともかく defiance にはちょっとだけときめいてしまう自分もいる。このときめきこそが alt-right のような social media mastery の狙う精神的脆弱性であり、日本語ではそれを中二病というのだった。

自分の中の techno-utopian で libertarian でしかし communist という矛盾は失敗した社会実験の一コマとして時代をうねる paradigm shift の波の狭間に消えてゆくのだろう。いいよ、消し去ってくれよ。

The Writer's Process

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読書記録。

大きめの変更を始めるにあたり design doc 的なものを書きたいが時間がとれず、考えがまとまらず、もしかして design doc を書くのって文章を書く人々から学ぶことがあるのでは・・・みたいな謎の気の迷いから聴いた。それなりに興味深い本ではあった。プロセスの話で、どうやって時間をとるか、どういうフェーズがあるか、というようなトピックを議論していく。

時間がないのは、ソーシャルメディアとかしてるんじゃないよ、自分にあった時間帯を見つけて書くんだよ、みたいなことをいうんだけどいやそうじゃなくて他の仕事があるせいで時間がないのだよ・・・。しかし根本的に時間は必要なので確保するしかないという現実に目を向けることができたのはよかった。

その後仕事(バグ取りなど)の忙しさは一段落したので、時間をとって書くことができた。もともとそんなに長い文章ではなく、3-5 ページくらいの短いもの。こんなものすら書けないとは・・・。

フェーズは、Research, Incubate, Structure the idea, Writing the first draft, Let the draft reset, Revise... とつづく。

自分のように大きめのリファクタリングをするだけ、みたいなケースは「調査」が必要という事実を忘れがちだが、人を説得するのに design doc を書くんだからちゃんと調べて(この場合、既存のコードを丁寧に読んで)やることを正当化したり事前に整理した方がいいね、という当たり前のことを remind できた。

アイデアを整理するにあたり、freewriting すなわちなんでも頭にあることを書き出してみるアプローチを推していて、自分はこれを以前から braindump と読んでいるけれど、そういうのも自覚的にやってみたら割とよかった。 3 ページの mini doc なんてズバっとかけそうなものだけれど、それでも一段階 freewriting / brandump を挟むとだいぶ認知の負荷が下がって良い。それにしても blog 書くのにやってんだから design doc でもやれっつう話ではある。


The Writer's Process が想定しているのはたとえば「本を書く」ように文章そのものが最終成果物なプロジェクトである。一方で自分はソフトウェア開発すなわちコードを書くという具体的かつ専門的なゴールがあり design doc はその一部に過ぎない。なので良いドキュメントを書くことに重点を置きすぎるのは的外れだし、場合によっては BDUF につながる恐れもある。特に自分はコード中心探索的アプローチ原理主義者なので事前にドキュメントを書くことに強い reservation がある。

一方で design doc を書くと決めたならそれを機能させる必要があるが、内容に何を含めるかはともかく「作文のプロセス」にはあまり共通見解みたいのはない気がする。ちょっと探した感じではこれというのが見当たらなかった。まあソフトウェア開発にとって作文は本題でないから仕方ない気もするけれど、それにしても人々はどうやって書いてるんだろうね、ドキュメント。

自分は design doc をガっと書くような気合が失われているので、コードを読んで調査をまとめたり疑問やその答えを記録して、やりたいことを箇条書きして眺め、というのを二周くらいして、それからドラフトを書く、という簡易版 writer's process がよく機能した。

それにしても立ち入った考え事をする能力が弱っているなあ。こうやって crutch を探しながら進まざるをえない人生のきびしさ。

A Book On Potty Training

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読書記録バックログ消化。

トイレトレーニングのやりかたに関する本。知り合いの家で見かけたのを忘れないよう Amazon の wishlist にいれておいたらいつの間にかゆこっぷ(奥様)が買って聴き、自分も聴くよう促されたので聴いた。

この話題で 300 pages / 8 hours 書けるってすごいな・・・という感慨があるが、さすがに専門家として obsess してるだけあって網羅的だった。網羅的ってなんだよと思うかもしれないけれども、そういうことってあるのだよ。

内容をかいつまんで書いても仕方ないので書かないが、トイレトレーニングには親のコミットメントが必要だぞ、という前提からはじまる本だった。重要なコンセプト(というのがあるのだよ)を何度も繰り返すので、叩き込まれる感じがある。おかげで役にはたった。若干スパルタ過ぎるのため全てをフォローできているわけではない。まあ自分よりもゆこっぷのほうが頑張ってくれた。

この本を読むと、その前に買った何らかの日本語のランダムなトイレトレーニング本はまったく情報量のないゴミだったなあと思う。インターネットの anecdotes を集めたようなやつ。育児関係で素人のコメントをランダムに載せてどうするんだ・・・。

トイレトレーニング、他の育児マイルストーンと同じくどれくらい苦労するかは子次第、および保育園/託児所次第という面もあるらしい。まったく何の苦労もせずパンツに移行したという人も、何ヶ月もてこずっているという人もいた。

Fitbit Versa Lite

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Fitbit Versa Lite を買った。安い Smart Watch としてではなく、高価な Pomodoro Timer として。

  • Pomodoro としては、まあまあ。振動に気づかず期限を無視することがしばしばある。
  • バッテリーは、こんなもたなくてよくね?というくらい保つ。まあ徐々に劣化するだろうから、長い分には良い。
  • 万歩計機能はあってもなくても良いが、帰宅時に一万歩達成!とか表示されるのはちょっと楽しい。Exercise detecdtion も、まあそこそこ良い。個人的に fitness tracking はあまり興味がないのでキラー機能といかんじではないけれど。
  • 心拍数がわかるのは面白い。有用性はない。
  • Apple Watch にもあるような、一時間に一回歩けといってくる機能。Pomodoro との組み合わせで割と良い。休憩のタイミングでちょっとあるくか、みたいな気分になる。
  • 自動画面点灯の反応が鈍い。そして画面の更新もワンテンポ遅く、一瞬消灯前の時刻が見えたりする。時計としてはいまいち。ここは Android Wear 時計の Always On に一日の長を感じる。
  • アプリは全然ないと言って良いが、Pomodoro はあるのでそれが全て。
  • スマホとの同期、たとえば notification の表示は使ってない。いらない。

といったかんじで買ってよかった。レビューを見る限りではだいぶ壊れやすいっぽいので、二年持てば上出来、一年持てば期待値としては達成かなあ。改善してほしいところは多いので、使い続ける限り次のモデルも買いそう。

自分用に Pomodoro アプリを書きたいのだけれど、エミュレータが Linux と Mac OS 用しかない!そりゃそうか。古い Laptop に Windows を入れようかな・・・。

Book: Bad Blood: Secrets and Lies in a Silicon Valley Startup

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Bad Blood: Secrets and Lies in a Silicon Valley Startup

ドライブのお供に聴いた。話は面白かったが Theranos のやばさは想像の範囲を超えていた。Enron と戦えるのでは・・・。序盤からひどさに溢れているのでああひどい会社の話なのだ・・・と聴いているとひどさがどんどん加速していく底抜けの疾走感。ドライブしながら何度も「ええーひどいまじかーおーい」などと口走ってしまった。このひどさで $9B valuation, 社員 800 人まででかくなれるのか。恐怖。

Uber の Susan Fowler 事件以来おもっていたこととして、議決権の強い株と弱い株、ある株ない株というアイデアは目論見はわかるが結果としては良くなかったなと思う。もうだしちゃった株はともかく今後は規制されてもやむなしではないか。  WSJ に「そういう株は買わなければいい」という記事があったけれど、みんながやってしまったら選択肢ないからね。Uber は利益がなく上場もしてなかったから大口投資家による圧力が機能したけど、これでもし IPO 後かつ profitable だったら創業者セクハラ社長を追放できなかったかもしれないよ? 本人が議決権を握っているわけだから。Theranos の投資家もちゃんと議決できる株もってたら社長の気分で board をクビにしたりもできなかったかもしれないし。(これがまさに FB だという見方もある。あの人たちは fraud はしていないと思うので言いがかりな気もするが。)

もうひとつ、個人的には "Fake It Till You Make It" という態度はもう scam 枠でいいなと思う。

たとえば自分が fake してる会社に騙されて転職しちゃったりしたらキャリアが ruin されちゃうじゃん。なので雇われプログラマとして fake なやつらに甘い顔をしないのは大事なことに思える。できてないものをできてないと言った上で夢を語るのは構わないけれど。

だたアメリカは scammer と entrepreneur の境目がすごくぼんやりしているのでこの意見が主流になることはないだろう。


そして若い visionary が意図せず fake をしてしまうことはあるだろうなとも思う。大きな夢があって、現実と夢の距離を無邪気に何桁も読み違えている。無知と楽観の力で本人は簡単だと信じている。だから自信満々にビジョンを語れる。騙しているわけじゃない。自分もむかしそんな人を見たことがある。もしかしたら Elizabeth Holmes も最初は単なる無邪気な visionary だったのかもしれない。

まあでも専門家の意見を求めるかわりに専門でない投資家を選んで金を集めたというから、やはり scammer だったのだろうな。そういえば scammer-entrepreneur もあったことあるなむかし。サイコパス力が低かったせいか筒抜けだったが・・・。

自分が会社なりプロジェクトなりを評価する必要があるときは、ビジョンとかよりコードなり製品なり tangible な observation に基づいて判断を下したいものです。夢のない話で、われながらシリコンバレー向いてないなと思うものなり。

 

Book: Measure What Matters

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Amazon.com: Measure What Matters: How Google, Bono, and the Gates Foundation Rock the World with OKRs (9780525536222)

OKR, 世間ではどういうものという話になってるんだろうな、という興味から読んだ。

この本は OKR の威力を過大評価している気がする。自分は OKR はそんなにたいしたものではないと思っているが、一方でその大したことなさが良さだとも思う。

会社に入ってはじめて OKR というものを知った時、プロジェクトマネジメントとかこんな雑でいいんかいな、と思ったのを思っている。世間では inception deck だのなんだのがもてはやされていた頃である。たぶん、世の中には OKR よりすごくでかっこいい目標管理/ビジョン制定の方法論は色々ある。一方そういうのを機能されるのはたぶんすごく大変で、できずにくじけることも多いのではないか。

OKR にはそういう大仰な難しさはあまりない。目標 (O) とその実現手段(KR)を箇条書きにして、四半期に一回見直しましょうね。組織のツリーにあわせて O や KR を breakdown しましょうね。なるべく定量的かつ客観的にわかる目標にしましょうね。以上。みたいなかんじ。

目標は単なる箇条書きだし、チェックも四半期に一回。しかも stretch とかいって達成できないのが前提になっているゴールも多い。定量的というけれど、製品開発だと "機能 A を ship する" みたいな KR になることもしばしばある。目標の雑さゆえ、あとちょっとで ship できそうだから 0.7 くらいにしときますか・・・など評価もしゃきっとしないことがある。雑。

雑さゆえ、いまいちな OKR を運用することはいくらでも可能である。目標設定を雑にもできるし、評価を雑にもできる。なので OKR というプロセスの強制力によって色々なことがみるみるよくなる、みたいなことはおきない。

この雑さには2つの含意がある。

含意そのいちは、仮に OKR の運用がいまいちであっても被害が大きくないこと。OKR のよくあるいまいちさは 1. 定量的/客観的でない 2. 野心的でない 3. まとはずれである だとおもう(本のなかでもそんな話をしている。)一歩さがると, 1 と 2 はプロセスが形骸化しているということで、3 はゴールがよくないということ。

形骸化したプロセスは迷惑な存在だが、OKR はその雑さゆえに形骸化しても被害がすくない、四半期に一回くらい、やれやれ・・・みたいな気分になるだけ。給料への影響もない。これがすごい厳密に定義された官僚的なプロセスだったら、そしてプロセスというのは厳密に定義されがちだが、つらいだろうと思う。官僚的で形骸化してる。いやすぎる。

含意そのには、強制力はないが nudge にはなっているということ。四半期に一回くらい自分の仕事の目標を考え人目につくところに書き出してみるのは、経験的にまあまあ意味がある。この仕事って結局なんなんだっけ、みたいのを見直すことになるから。

OKR は top-down で voluntary なので、組織の木の下の方にいくとやっていないところもある。たとえば今のチームはやってない。でも本をよんだら OKR してもいいんじゃないかという気がしてきた。組織図を2つか3つのぼるとやってる。年に一回大きなリリースをする世界とは相性が悪いのではないかとも思うが、Intel みたいなハードウェアの会社だってやってたわけだから理由としては弱いかな。そしてチームはともかく個人でやってる人は割と少ない印象。まあ部門によるのかもしれない。自分はずっと周縁的なチームなのでわからん。ガチ勢はどうやってるのだろうね。


自分のチームがやってないせいもあり、自分は勤務先の OKR をそんなに良く機能しているとは思っていなかった。ただ本を読んで、機能している部分もあると見直した。

まず、ちゃんとトップダウンにやっている。おおむね上の方ほどちゃんとやっている。O はともかく KR はだいたいが定量的である。スコアも公開されている。あの部門ちゃんとしてるなだとか、勢いあるなとか、いまいちなことやってるなとか、でかいこと言ってたけど全然できなかったのね・・・とか色々わかる。自分のような下々が(たとえば本を読んで)よし自分のチームだけでも OKR やるぞ!とかいってボトムアップにやって組織の壁にぶつかる・・・みたいなのがこの手のプロセスにありがちなことなので、上のほうがやっているのは良い。

透明性。OKR は基本的に公開されている。公開されないドキュメントに書いてるだけのダメなチームとかもあるが、少なくとも上のほうはちゃんと見える。(株価に響くようなデリケートな情報は伏せ字になっているが、それは妥当だと思う。)これがそんなに自明じゃないのは本で指摘されるまで気にもしなかったけど、たしかに経営者とか上の方の目標とかがポエム以外で communicate されていた会社で働いたことなかったな。まあ、このくらいは透明度あってもいいんではないかと思う。

給料と連動していない。こんな雑なものに連動されたら困るわと思ういっぽう、最初に働いた2つの会社はそういえば完全に形骸化してる目標管理を口実に給料を決められてムカついた記憶がある。当然 stretch goal みたいのを持つ気はまったく起こらず、従ってあれらが従業員(自分)を empower するとは一ミリも思えなかった。勤務先の OKR はそういう性質はなく単に背筋を伸ばすツールなので、ちょっとめんどくさいけどやれと言われればやる気にはなる。というか今となってはむしろチームでちゃんとやってほしいな、とすら思う。

勤務先の OKR に感じる不満は組織の下の方への浸透度が低くやってない人が多いせいで組織全体の透明性などが達成できていないこと、当事者としてもいまいち継続するための動機づけが弱いことで、OKR そのものの aspirational な性格は今の所損なわれていない気がする。

みんなやればいいのにと思う一方、全社員が OKR を強制されている会社というのもそれはそれで嫌な予感がある。なにかをやらされるのは官僚化や形骸化につながるから。他のよい枠組みに乗っているならそれはそれでいいだろうし、組織の方向性、成果や責任みたいのがはっきりしないのだとしたらそれは組織の練度が足りないということで、きっと OKR を押し付けてもうまくいかないよね。良くも悪くもそんなに強い力はない気がする。


そういえば、どういう目標を持つのが良いかという話はあまり詳しくされない。一方で The North Star などのジャーゴンがとびかうあたりに The Lean Startup くらい読んでるよねという空気もあった。

Book: The Age of Surveillance Capitalism

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The Age of Surveillance Capitalism: The Fight for a Human Future at the New Frontier of Power: Shoshana Zuboff

Tim Wu の The Curse of Bigness を聴いて、テック企業のあり方について考えてみようかな・・・と聞き始めた。あちこちで話題になっている一冊。

なのだが・・・これ厳しくね?メタファとレトリックでひたすら FUD しまくってて聴くに耐えない。お前は何言ってんだ・・・と頭痛がしてきて数時間で挫折した。たぶん多少は意味のある指摘もしているはずで理解したいのだが、罵詈雑言の割合が高すぎてちょっと無理。空想上の巨悪を叩かれても、いやそんなことしてないんで・・・的な気分にしかなれない。耳が痛いのでなく頭が痛い話でつらい。

自分はテックカンパニーのプライバシーの扱いはもうちょっと何かが何とかなってもよいのではとは思っている。でもこういう乱暴なバッシングから有意義な議論が起こる様は想像できない。

自分の勤務先の現実なんて、世間の若いインターネット企業が growth hack とかいいはじめて何年もたったあとにようやくそういう話をしはじめたくらい prediction based でなんかするのに出遅れており、自分はこんなやる気なくて大丈夫なのかと思っていた(し、そのへん頑張らなすぎて消えていったとしか思えないサービスも多い。)Surveilance して predict できるならもっと色々うまくやってるはずじゃね?株価とか又聞きで判断せず製品さわった方がいいよ・・・まあ technical なあら捜しをしても詮無い書き手なのだろうけれども。

しかしこうやってセンセーショナルにバーっと叩いて、それがバズってなにかが起こるのかもしれず、そうしたら著者としては満足なのだろうなあ。レビューも絶賛してるのばかりだけれども、こういう話を聞きたい人が聞きたい話をしてくれて喜んでいる様子。炎上商法みたいのに振り回されるのだとしたら悲しいが、人々がこれを求めているところが時代なのだろうな。

繰り返すけど、評判から判断するになにか意味のある議論してるんだと思うのだよね。でもほんとにノイズがキツすぎて読めないよ。

Book: The Curse of Bigness

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The Curse of Bigness: Antitrust in the New Gilded Age: Tim Wu

でかい企業の独占はよくない、という話の発端である Shaman Acts や、それをうけた 20 世紀序盤から中盤にかけての anti-trust 活動、70 年代のシカゴ学派によるカウンターから現在までの歩みを紹介しながら、いまの anti-trust は元々の精神を失っている、取り戻そうと語る。

Tim Wu にしては薄い本だけれども、The Master Switch で anti-trust のハイライトである AT&T を研究し The Attention Merchant でインターネット企業を研究した流れでみると自然なかんじはする。自分は昨今のテック企業をめぐる言論には mixed feeling だけれども、でかすぎてダメというのはそうだろうなと思う。

Forbes には否定的なレビューが載っているが、全部読んで振り返ると自分は Tim Wu に分があると思った。自分が左よりで Tim Wu ファンであるバイアスは差し引く必要があるが。

テック企業は anti-trust の例外と見られることがある。つまり、たとえば Microsoft を分割しなかったけれどその後に新興企業が出てきて世代交代したし、それまでも The Innovator's Dilemma で語られているように世代交代の disruption は続いてきた。競争が機能してるんだから anti-trust みたいな規制いらなくね?という主張。

でも、たとえば Microsoft が勃興できたのは IBM が anti-trust を巡って政府と戦った名残で IBM PC がやたらオープンになっていたおかげだし、同様にそのあとのインターネット企業がウェブでやんちゃできたのも Microsoft が anti-trust のリスクに備えて無茶しなかったからという面はある。

もうひとつは、やはりインターネットおよびウェブというのは電話以来百年ぶりの超特大イノベーションで、PC market を独占していた Micorosoft が氷山の一角にあるパイを食べたくらいではまだまだ余裕で巨大な市場が残っていただけという気が個人的にはしている。その超巨大市場がようやく飽和して現代があるのではないか。

そして企業に悪意というか強欲さがあろうがなかろうが anti-trust のない市場には monopolize の tendency みたいなものがあり、それはある意味で自然の摂理というかエントロピーみたいなものなので、人類の平和のためになんらかの秩序が必要で、 anti-trust はそのための発明なのだ・・・という説明を Tim Wu はしていないけれど、自分はそう納得した。

それにしても Anti-Trust というアイデアは全然自明じゃないよね。こんなものが 19 世紀に提案されていた事実にはアメリカの民主主義の力を感じざるを得ない。最近のアメリカには失望つづきだったけれど、そうした歴史や Tim Wu のような書き手の存在はさすがと思う。

Book: Building Evolutionary Architectures

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Building Evolutionary Architectures: Support Constant Change

もうすぐ Refactoring 2ed. がでるという宣伝 Podcast のなかで Martin Fowler が言及していた Thoughtworks 勢の薄い本。

おまえらアーキテクチャレベルでもばんばんリファクタリングしていけよ、そのためには decoupling が重要だから Microservices にしとくといいよ、あとガンガン変えると非機能要件とかが失われがちだからテストとかモニタリングとか audit とか review とかで監視しとこうな (これを fit function と呼び、本書のコアコンセプトになっている)、ただ人手でチェックすると厳しいからなるべく自動化して CI/CD の pipeline に載せような、というような話だった。

読み始めたもののあまり興味がわかず、ぱらぱらっと読んで終わりにしてしまった。一つにはあまり新しい話がなく盛り上がらない。Thoughtworks シリーズで Refactoring, Continuous Delivery, Refactoring DatabasesNoSQL Distilled, Building Microservices とか色々あるのをぱらぱらっとつまみ食い用にまとめなおしたかんじがする。まあいいんだけど、もっと内容を絞ってそのぶん踏み込んだ知見を見せてほしい感じがする。

あとは例に出てくるのが Netflix だの GitHub だの Twitter だのの事例で、日経ナントカがエンタープライズのおっさん向けにインターネット・カンパニーの華々しい話をしてレガシー大変だろうけどおまえらもがんばれ、みたいに説教してる的な空気を感じてしまう。別に日経に悪意があるわけではないんだけれども、ふだんから HN とかを読んでる身としては新味がない。本書はたとえば DBA という職種をステレオタイプ化してディスっている説があるのだが、そんな SIer ディスってる退職ブログみたいな話されてもなあ・・・。同じエンタープライズ路線でも DDD とかは独自性や誇り的なものがあったじゃん。

あとは完全に個人的な話として、自分はもうアーキテクチャとか興味ないんだな、と思い知らされた。でかいプロジェクトの下っ端、アーキテクチャに口出す余地なし。ましてや組織がどうとか完全に out of control. たとえば Inverse Conway Maneuver, 最初にこの手の話を聞いたのは Twitter の microservices 移行の話だったと記憶しているが、その頃は零細でお山の大将をしていたときの感覚が残っていたので一定程度共感があった。今はもうない。

これは悲しいことだが、様々な選択の結果なので仕方ない。自分にとって actionable であったり、そうでなくてももうちょっと getting excited なものを中心に読んでいくほうがいいね。アーキテクチャとかは、こうしてたまにつまみ食いするくらいでいいでしょう。

同じアーキテクチャの話でも何年か前に読んだ Hadoop Application Architecture は一定程度楽しめたので、やはり乗っている要素技術のかっこよさは大事な気がする。RDBMS の trigger で microservices に migrate だよ、とかいわれても外野的な盛り上がりがゼロすぎる。実務家にはいいのかもだけどね。


そういえばこのあと関連する Accelerate という本も聴いた。こっちは割とよかった。いろいろな規模の会社で働く人々を相手にサーベイをしたら、やっぱし devops 的なノリで CI/CD しないと厳しいということがわかりました、という内容。まあそうっすね、という内容だが、説教ではなく調査をベースにしているのがよい。

Book: So Good They Can't Ignore You

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So Good They Can't Ignore You: Why Skills Trump Passion in the Quest for Work You Love: Cal Newport: 8601420220263: Amazon.com: Books

Kzys が読んでいるのを見て興味を持った。Audiobook だと 6 時間半の薄い本。

基本的にはモダン根性論のバリエーションで、自分の好きなことをやるといっても実力 すなわち "Career Capital" がないと成功しないからまずは努力して実力アップに励もうな、という話。典型的なモダン根性論との違いは capital を構築した上でそれをどう invest するかにも重きを置いているところ。根性論者はつい努力してればいつかうまくいく、という話になりがちなので、努力の成果をどうやってやりがいのある仕事に繋げていくかを議論しているのは面白い。

というか、このひとそもそも読者の entrepreneurship を全然疑ってないのよだね。「おまえら cubicle に縛られた社畜なんてイヤだから会社やめて独立したいと思ってるだろ?ちょっと待て、今それをやると失敗するからまずは修行だ。しばらく修行したあとにどうやって自由の扉を開ければいいか教えてやんよ」みたいな論調。じっさい著者は高校生だった dot-com 時代に web design の会社を作って小遣い稼ぎをしていたという。そこから MIT で CS の博士取ってるんだから、勢いのある人なのですね。

自分もおおむねモダン根性論者なので基本的な主張に異論はないが、一方で entrepreneurship は全然ないのでいまいち対象読者じゃない感はあった。たぶん期待されている感想は career capital 稼がねば、だと思うのだが、自分はどちらかというと career capital の investment についてもうちょっと考えればよかったな・・・と反省した。

プログラマたるもの career capital をどう積み増すかについては普段から考えているわけだけれども、使い方は、自分はそんなに深く考えてなかったね。そしてチマチマ貯めこむことばかり考えていたせいでガツっと増やす機会を逸したとも思う。結果だけ見ると、自分が二十代に溜め込んだ career capital でやったことといえば大企業への転職なわけで、そこにまったく entrepreneurship はない。そして大企業勤めの最初の数年で貯めこんだ career capital の使いみちは本社への転勤に使った。これらの選択をしたときはそれなりに冒険したつもりだったけれども、振り返ってみると国債買うようなもんだよな。もうちょっと他になかったのかね・・・。などと career capital について思いを馳せたりした。まあ大企業そこそこいいとこだし自分は臆病者なんでファンタジーですが。

日本語のコミュニティだと「やっていき」とかいってる人々からはこういう肝っ玉を感じ、割と尊敬している。


それはさておき、気に入らないところも多かった。

著者は "Passion Hypothethis" すなわち follow your passion then everything follows みたいな考え方はダメだと主張し、典型的には blog で micro-celebrity になって食ってく、みたいなのを強く批判している。自分も microcelebrity は普通にダメだと思うが、一方でそういう人生ドロップアウト路線に入りそうな人が MIT の Ph.D からストレートで full-time の academia に進むエリートの権化みたいな人の努力信奉に耳を貸すだろうか。人生ドロップアウトしたくなってしまう人というのは努力して報われると信じにくい立場にいることが多いわけで、本書のメッセージは人生行き詰まって博打で一発逆転に走ったりコミュニストに転向しかかってるひとに向かって資本家が「金を稼ぐといいよ」といってるようなもの。相当感じ悪い。自分だったらうっせー黙ってろ、と思って投げ捨てるね。本気でそういう人を説得したいなら他の語り方があると思う。

あとは "Knowledge Worker は努力しない" という話を繰り返すのだが、別に肉体労働者もサービス労働従事者も努力してないよ!というか knowledge worker は普通に雇用されているいわゆる労働者の中では努力してる方じゃね?著者がと実際に比較しているのはスポーツやエンタメ産業など競争が激しく半自営業的な振る舞いを求められる仕事をしている人々と雇用され給与で生きてる労働者であって、要するにボンヤリ労働者やってると搾取されるから頑張って自由な資本家というか career capitalist を目指そうな、という話じゃん。White collar とかいっておけばまだ角が立たなかったのに、オレ定義で knowledge worker とか言ってると Drucker に祟られるぞ。

あと職業的成功で行き着く先のイメージが若干 Soft Skills の人みたいで夢がないというか、いまいち憧れが刺激されない。著者はせっかくエリートなんだからもうちょっと高尚なビジョンみたいのがあってもよくね?全体的な意識の高さに反した motive の selfishness がやや白ける。これは趣味の問題かもしれないし、素直で良いという見方もあるとは思うけれど。個人的にはモダン根性論にはそういうキラキラ成分を求めているのであった。

著者はモデルケースとして色々な人々にインタビューし、それを語りに取り入れている。(Amazon のレビューにはこれを emulating Malcolm Gladwell と評しているものがあり、わからんでもない。) ただこうした語りの常として我田引水感が強い。

特にひどかったのが冒頭と結末に登場するアンチ・モデルケースのエピソード。就職した銀行員の仕事に早々に嫌気がさしアジアに飛んで職を転々としたある若者は放浪の果て仏道に入り、座禅や公案などの修行を重ねる。あるとき数ヶ月がかりの難しい公案を乗り越えたあと、若者は気づく。環境が変わっても自分は変わらないのだと。彼は林の中で泣く。そしてしばらくのち仏道を去って元の銀行員に復帰し、ハードワークを重ね出世し世界を飛び回るのだった・・・・

・・・という話なんだけど、著者はこのエピソードを「ほら経験なしに世界に飛び出してもいいことないでしょ、でもキチッと働いて成果を出せば世界を飛び回るような仕事ができるようになるよ。だから Career Capital 貯めてこうな」と解釈している。でもさ・・・普通に考えてこれ仏教のおかげで小さな悟りを開き煩悩をすてたからキャリアに集中できたって話じゃね?むしろ放浪の成果じゃね? ほんとにキリスト教圏の住人は他の宗教への敬意がなくてひどい。だからお前ら戦争ばっかしてんだよまったく・・・と呆れた。


などと writing や storytelling の浅はかさにはケチをつけたくなる面もあるけれど、全体として著者の切迫感は伝わってきた。著者が批判する lifestyle guru / microcelebrity をふくむ多くの自己啓発本著者は、自己啓発自体を生業にしている故の胡散臭さ、信頼できなさを拭い切れない。著者の Cal Newport はたぶん本当にアカデミアとして成功したいと思っており、この本もそのための "quest" なのだと言っている。だから浅はかさはあれ嘘くささは無い。

一歩下がってみると、全編を通じ自身が lifestyle guru に堕ちる誘惑と闘いながらアカデミアとしてのキャリア的成功に obsess する様が伝わってくる。そこには憎めなさがある。続編の Deep Work は書き手としての成熟を感じ、それはそれでよい。というかんじで Cal Newport への理解を深めました。

Book: The Manager's Path

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The Manager's Path - O'Reilly Media

テック企業におけるマネージメントというかマネージャ業の薄い本。たまにはこういうのも読んどくかなということで。

マネージャ何してくれる人なの、という一章, mentoring, TL, managing people (Engineering Manager), Managing Teams (Director) と続き、最終的に CTO にまでたどり着くという壮大なストーリー。後半は完全に他人事すぎて目が滑ってしまった。ただ本業にならない限り tech 企業 management の本はもう読まなくていいかなと思う程度には漏れなく広く浅い構成だった。

よくかけていた。まず自分の勤務先のようなテック企業の実態をきちんと反映している。Generic な management の本ではなく、ほんとに software company で tech side の management をする人向け。話の前提に身に覚えがあり、したがって説得力もある。

全体的にすごく常識的で、ぶっとんだところがない。やたらと組織を変えろ!とか熱り立った主張はせず、立場に応じてできること、すべきことが説明されている。たとえば engineering manager とかには大した権力がないわけで、そういう実態を反映している。あとは management ladder に行く前に tech をそれなりマスターしておかないと厳しいよ、などともいう。そうでしょうな。

個人的に関係ありうるのは TL の話くらいまで(TL 業はしないけど、下っ端とはいえ年をとると一定程度 leading 色のあることをしないといけない)。Engineering Manager の話は上司のやってることを知る、という意味では良い。

先日読んだ Crucial Conversation にしろ、マネージャ大変だなと思いました。


後半は Director とか VP の話に進むわけだけれど、これちゃんとできるひといるんかな・・・というか、そのレイヤは経験的にぱっとしない人が多い印象を持っているが、書かれている仕事の大変さを考えるとそれも仕方ないなと思った。

やはりエライ人がすごい権力を発揮しなくても下々がよろしく働いて前にすすめる組織の方がいいよなあ。エライ人がぱっとしないのは、なんというか仕方ない・・・。

Director/VP でそれなりにうまくいっているパターンとしては、もともとスタートアップの社長でしたとか、競合/同業で TL だったけど色々あって移ってきました、という人たち。あとはチームがでかくなるにつれて上にずり上がっていった人も、そこそこちゃんとしている。一方で会社の中の関係ないところから異動してきたパターンにはあまりよい印象がない。

チームのプロパーが出世した場合、組織やコードベースの内情に通じている強さがある。競合やスタートアップから来た人は、チームが持っていない(が必要としている)何かを持っている。しかし会社の中から滑ってきた人には特に何もない、気がする。なにかある場合もあるんだろうけれども・・・。

まあ下っ端の戯言なんでエライ人はばかめ・・・とか思いつつそっとしておいてください。

Book: Crucial Conversations

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Crucial Conversations Tools for Talking When Stakes Are High, Second Edition: Kerry Patterson, Joseph Grenny, Ron McMillan, Al Switzler: 8580001040288: Amazon.com: Books

Audible できいた。難しいが重要な会話 = Crucial Conversation をちゃんとするにはどうするか、という本。自分はなんとなく交渉事が苦手な気がしていたので、何かの足しになればと思って読んだ。なんとなく tactic というか selfish なかんじで強引に話を片付けるみたいなものかと思っていたら、ずっと principled でまともな内容だった。

自分や相手がムカついた気分だったり過剰に警戒していたり感情的になっていたりすると難しい話はできないので、相手もまともな人間であるという前提で敬意を持って接し、自分の主張を開示しつつ相手の主張や意向を丁寧に汲み取り、合意できる部分を強調しつつ互いの着地点を探っていこうな、というような話。

こう書くとすごい精神論ぽいけれど実際にはそのためのステップが色々議論されている。ただステップを教えてくれるからといってうまくできる気がするかというとそんなことはまったくなく、文中に登場する沢山の胃が痛くなるような舞台設定や会話例にこりゃ難しいわ・・・という気持ちになる。

最初のステップとしては、会話の中で自分が感情的になる瞬間が crucial conversation の始まりなので、それを正しく検知して crucial mode に入る、というくらいはできるようになりたい気がした。

仕事よりは夫婦の会話の方が出番は多そう。今の仕事、よく考えるとそんなに crucial moment は無い気がする。マネージャとかだと出番も多そうだが。夫婦の会話、別にしょっちゅう crucial moment があるというわけではないけれど、自分たちは夫婦関係の stability に高い優先度をおいているので、こういうのは大事。


ふと翻訳あんのかなと Amazon.co.jp をみたらあるにはあるが全然読まれてなさげ。なぞ。

(Audio)books of The Year

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順不同。

Hit Refresh

Microsoft の CTO, Madella 氏による新しい MS の話および自伝。

すごく教科書的なモダンテック企業の社長だった。Emphasy, Inclusion, "Growth Mindset"... 半分くらいは、よその会社の偉い人、たとえば Sheryl Sandberg や Sundar Pichai が言っても全く違和感ない内容。ただそれが網羅的なのが印象的ではある。すごく勉強してるのだろうなあ。CS 出身で、大学の勉強を振り返りながら「(P-NPのような)計算量の理論は経営の役に立つ」みたいな話をしており、思わず応援したくなる。

ビザの話もちらっとでてきて、外国人仲間(?)としては MS パートより自伝パートの方が楽しめた。

Who Says Elephant Can't Dance?

テック社長読み物を続けて読みたくなり、IBM 社長版。15 年以上前の古い本。

Gerstner はコンサル出身のブロの雇われ社長で白人。Nadella とは対照的だ。いまのテックサークルはファウンダー/エンジニア信仰が強く、プロ経営者は嫌われている。自分も Gerstner は IBM をテック企業から受託開発企業にしてトドメを刺した悪人だと思っていた。

けど、そう単純でもないと心を改めた。なにしろ当時の IBM はガチで潰れかかっており、しかも分社化という筋悪の再建策を準備していた。Gerstner は少なくともその会社を立て直し大幅に延命した。インターネットの津波にも(受託開発という形で)対応した。

受託開発への舵によって、結局テック企業としての IBM は死んだと自分は外野として一方的に信じているけれど、他に良い方法があったのかはわからない。2000 年前後は実際にシステムのウェブ化みたいのが今より大きなビジネスで、すごく流行っていた。ACM の月刊誌すら企業の「IT化」みたいな話ばかりして、プログラマの仕事はオフショアされるから上流いっとけ、みたいな雰囲気だった。この流れを逃さなかった、というかほとんど作り出したといってもいい影響力は、評価されるべきなのだろうな。

そして Gerstner が持ち込んだ社内制度、たとえば年功序列に対する成果主義みたいのは、今のアメリカ企業はみんなやってることだ。そういう改革の話をよむと、アメリカの会社も昔は平和なもんだったのだなと思う。時折現れる旧 IBM 文化の奇妙なエピソードは、今読むと Catch=22 ばりに狂ってて面白い。時代をかんじる。

勤務先が傾いたとき、こんな雇われプロ社長がやってきたら自分は変化についていけるだろうか。景気に守られたゆるふわの皮が剥がれた酷しい世界で生き延びられるのか。こわいね。

など、予想に反して Hit Refresh よりだいぶ面白かった。

Option B

経営者読み物…ではないけれど。

Sandberg 個人のエピソードが孕むやや覗き見的な面白さを別にすると、基本的には Learned Optimism の話だった。

Learned Optimism

これは活字で読んだ。心理学者が書いた、楽観は学べるぞ!という話。MindsetGrit に連なるモダンアメリカ根性論の始祖と言っても良い。認知療法との同時代性もある。

著者は「学習的無気力」の実験(犬に電気を流すやつ)が行われた現場に立ち会い、無気力が学べるなら楽観だって学べるのではと optimism の研究に邁進する。Option B で紹介される 3P (permanence, pervasiveness, personalization) はその主要な成果。

語られる楽観理論開発のエピソードがいちいち面白い。実は学習的無気力の実験には続きがあったという話、保険のセールスパーソンを楽観性ベースで採用したら退職率が減った話、大統領候補の演説を分析したら楽観ワードを多く使っている候補者が勝っている、などなど。さすがモダン根性論の始祖はちがうで。若干眉唾なのもあるが、そのへんは時代の荒々しさということで大目に見たい。

だいぶ前の本だけど古びないユニークさがある。個人的にはかなり面白かった。ただ自分は割とモダン根性論者なのでバイアスはあるかもしれない。

How to Be Happy at Work

見も蓋もないタイトル。基本的にはお金や世間体に負けてはいけないよ、目的や使命感を持って生きような、という話。アメリカ、お金の重圧はなんか日本より厳しい気がする。格差社会だからかもしれないが…あるいは自分が友達のいない外国人だからか...

特別面白い本ではなかった。が、仕事について考える機会にはなる。

Start with Why

目的(Why)がないとだめなんだよ、というはなしで、ある意味上の本と呼応している。主張はわかるが、全編通じ結局は Apple サイコーという話で、そうかそうか…という気分。Apple サイコーという主張自体に特段異論はないが、その話はもう飽きたよ…神を信じよって言われてる気分だよ…自分そっち系じゃないんで...。

ただマーケティングというかメッセージングの本として読むとそこまで食傷感はないかも知れない。実際、著者はマーケティングのひと。

Made to Stick

人の記憶に残るメッセージとは、という話。けっこう面白かった。しかし皮肉なことにまったく中身を覚えていない。たぶん今の自分には縁のない中身だったため。じゃあなぜ読んだのかと言われても困るけど。人に話をする機会が多い人向け。

Smarter Better Faster

エピソードは面白いが役に立たないというジャーナリストが書いた自己啓発本の典型とでも言う内容で、まあエピソードは面白かった。FBI はアジャイルで組織横断犯罪記録データベースを作り、MVP の時点で役に立ったぞ(ここで息を呑む誘拐犯追跡エピソード)だからおまえらもアジャイルしろ!みたいな。(この記事など参照。あと SEI が case study を出している。うさんくせー...)

どうでもいい本だったけど、軽薄な自己啓発が読みたい気分を満たしてくれたのでまあまあ満足。でもやっぱり自己啓発本ってちょっと狂ったくらいの実践者やアカデミアが自説を熱く書いたやつのほうが、多少粗があっても説得力あるね。

Humble Inquiry

リーダーシップな立場にいる人達は下々に対し謙虚さと共感を持って話を聞かなければいけないよ、その技法がこの humble inquiry だよ、というはなし。リーダーの皆さんには読んでいただきたいいい話だった。下っ端なのになぜ読んだかというと著者 Edgar E. Schein のファンだからです。ただ下っ端には前作 Helping のほうが良いかも。

Actionable Gamification

人為的に仕事や勉強のやる気をだせないかと思い読んだ。著者は Gamification という語をユーザのエンゲージメントを高める手法という広い意味で使っており、要するにそういうテクニックを色々紹介する本。サービス屋さんにはいい本だろうけど、自分自身を欺く目的には大掛かりすぎた。テクニック自体はよく整理されていて感心した。

なお著者は元ネトゲ廃人らしく、時折ゲーマーらしい洞察を感じる。

Irresistible

これは逆に、テクノロジーが人々を虜にしすぎてやばいと警告する本。この文脈ではネトゲもソーシャルメディアも同じ枠に入れられるのだな、と思いながら読んだ。現代版ゲーム脳みたいな話。

ゲーム脳って当時はトンデモな扱いだったけど、ネトゲやスマホ、ソーシャルメディアにメッセージングなどが人々の大きなマインドシェアを占めている昨今はあまり馬鹿もできなくなったなと思う。

The Attention Merchants

人の心を虜にするメディアと広告の関係について、19世紀の新聞広告の誕生やパリの張り紙スパム時代からテレビのリアリティショウや MTV を経て今日のソーシャルメディアまで歴史を紐解く。The Master Switch に負けない濃密な書きっぷりはさすが Tim Wu.

インターネット広告業界の人は特に興味深く読めると思う。自分たちの歴史的位置づけがわかる。

The Inevitable

WIRED 編集長 Kevin Kelly による、テクノロジー最高だし不可避だから身を預けてこうな、という話。これがシラフで出せた 2016 年は平和だったね。今読むと能天気すぎる感。ただ正直ちょっとは kool aid がないとテクノロジ産業死んでしまうので、こういう楽観的なのもぼちぼち読んでいきたい。まあ、いい話です。

White Trash

ここから先は The other side of America 研究。

Poor White などとよばれ先の選挙で一気に注目を集めた demographic, 実は入植当時に労働力として半奴隷的立場でイギリスとかから連れ込まれた貧乏人や犯罪者などが先祖で、その人々が権力者にうまいように使われたり反抗したりしつつ各時代を生き延び今日に至っているのだよ、という歴史をすごい詳しく書いている。

面白かったけど、自分のアメリカ歴史リテラシーがなさすぎて厳しかった。まずは小学校の教科書を読んだほうがよさそう。

The Unwinding

アメリカの価値観が綻んでいく現代を、その綻びによって苦い思いをした市井の人々の半生記を通じて覗きみるという趣旨。穀物燃料で一山当てようとした男、民主党議員に憧れ秘書を目指した男など、登場人物はアメリカっぽくて雰囲気はあった。ただ全体的に散文的な構成なのとサブカルチャーを含むアメリカ基礎知識不足で自分にはやや厳しめ。

Stranger in Their Own Land

バークレーの社会学者が南部の価値観を理解するために一年間ルイジアナで密着取材する、という話。タイトルは南部人が昨今感じている疎外感を表したもの。

石油産業に好き放題荒らされているルイジアナの現状のやばさを描きつつ、それでも共和党を支持し続ける住民たちの話を聞く。その矛盾を支える人々のメンタルモデルを理解しようと著者は取材を重ね、さいごに保守層の "deep dream", 内的世界を描写してみせる。

すごくよくかけていた。自分はこうした南部保守層の心理にはより添えないけれど、外国人が(控えめに言って)疎まれる温度感への理解は深まった。うっかり南部に観光旅行とかすることはなかろうな。メシはうまそうだが…

著者の Arlie Russell Hochschild は昔読んだ The Managed Heart も良かったし、自分の中では評価高し。

Dreamland

アメリカの opioid crisis について書いた本。

Pain management という患者本位医療を目指したはずの movement が製薬産業の強欲と噛み合って依存性のある pain killer が人々にばらまかれていく一方、メキシコから真面目でイノベーティブなヘロイン商人が流入して産地直送高品質低価格のヘロインで従来のしょぼい麻薬を駆逐しミドルクラスにまで顧客層を広げ、結果 pain killer 中毒になった罪のない市民がヘロインに手を出すようになる…という展開が fascinating.

本としてはめちゃめちゃ面白かったが事実としてはグロい。自分や家族が知らずにうっかり opioid 系 pain killer を処方されヤク中になったらと思うとだいぶ恐ろしい。ヘルニアとかにすら処方されるケースがあるらしいし。

そしてアメリカは gun だの war だの drag だの人殺し要素が日常的すぎ。飼い慣れされた民族の一人としては、自由だの独立だの言った結果がこれじゃしょうもないな…という気分を禁じ得ない。

Nomadland

経済的に困窮して住居を失った末に RV(キャンピングカー)で暮らす人々の話。多くが60代以上の年寄りで、季節労働で日銭を稼ぎながら有料無料のキャンプ場や Wall Mart の駐車場などを転々として暮らす。オンラインにコミュニティがあったり、砂漠の街で年次オフ会みたいのも開催されているらしい。

季節労働として年末の Amazon の倉庫労働がハイライトされている。Amazon は Camper force と銘打って holiday season に倉庫付近の RV park を借り切り国中から RV 労働者を集めているらしい。そんな年寄りに過酷な肉体労働させるのは酷い話に思えるが、少なくとも賃金未払いとかはないので人気の職場なのだとか。うへえ…

著者はこの RV コミュニティに密着すべく中古の RV を買い、砂漠の集会に参加したり Amazon で働いたりしている。すごい。実際に数人の RVer と親しくなり、その人々の人生が話の軸となる。なので距離のあるドライな読み物ではなく、パーソナルな色が強い。世の中の厳しさに胃が痛むが、描かれる人々のたくましさは良い。

RV, 町中で普通に見かけるし近所にも RV の溜まっている通りがある。あの人たちはなんなのだろうなあと思っていたので、まあまあ謎が解けた。

なお RV の住人はほとんどが白人だという。それは有色人種と違い racist に襲われたりする心配がないからだとか。自分たちは困窮しても RV 暮らしにはなれないのだな。特になりたくはないけれど、意外なところに racism の影を見てしまった。


去年に続き Audible のおかげで炊事などの家事や通勤の時間が読書タイムになり、慌ただしい日常が少し知的に潤った。ただもうちょっとこまめに記録を取らないと中身をすっかり忘れてしまってだめだね。

技術書: Information Theory: A Tutorial Introduction, Learning TensorFlow, Python Machine Learning, Deep Learning. Programming in Haskell, Kotlin in Action. ジム読書がなくなった4月以来激減。やむなしだが悩まし。

2016.

Podcasts Of The Year

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Tech なやつは段々と聴かなくなり、大手がふえた。ニッチでおもしろい番組を探す労をかけていない帰結だとおもう。Tech は基本ニッチだから。

以下、今年聞き始めたもののみ。

The Daily. NYT がやっている, たぶんいちばんメジャーなニュース podcast. 平日毎日降ってくる。各 20 分くらい。通勤中に聞いてる。

完全な時事ネタもあれば、NYT の長編取材記事のつまみ食いをする回もある。新聞を購読しているにも関わらず top news に目を通す気合のない昨今、Briefing として重宝している。NYT の左ぶりが嫌いでない人には良いとおもう。

Exponent. Tech pundit の Ben Thompson がブログのおまけでやっている番組. そのブログ Stratechery は名前の通り strategy 色というか PM 色が強すぎ、 execution 信仰の強いプログラマたる自分は好きになれない。でもこの podcast はなぜか好き。最近肩身の狭い西海岸住人としては語り口に現れる暑苦しくも信念のある「イノベーションだろッ」的 arrogance に励まされるのと、 co-host である James Allworth とのバランスがよい。

Reply All. B 級テックジャーナリズム(?). サポート電話詐欺を追いかけてインドに行く話謎の間違い電話の話などはよかった。最近だとメキシコの政党が Twitter troll を雇って選挙に meddle してる話も。

Planet Money に似てなくもないけど、より下品かつ雑。真に受けきれない陰謀論的面白さがある。なお Planet Money も面白いです。Kzys 氏のレビュー参照。

Revisionist History. Malcolm Gladwell がランダムに一回完結の面白い話を披露する。もう完結しちゃってるけどクオリティの高さが異常。Gladwell, 話がうまい。ぽつぽつバックナンバーを聞いている。

Y Combinator. 講演の録音を流すのが主。たまに有名人が出て来たときだけ聴く。Diane Greene の回は良かった。


あるとき ATP (相変わらずきいてる)でホストの Marco Arment が「人は情報を求めて番組を聞き始まるが、パーソナリティを気に入って聞き続ける」と言っていた。まったくだなと思う。自分が楽しみにしている番組たちも、結局は中の人が好きできいている。純粋に情報をほしいと思ったら Audible で本を聴いたり活字を読んだりするほうが早い。ここ数年で商業的で高品質な番組が増えてきたけれど、肌の合うパーソナリティはかならずしもふんだんではない。

Marco Arment といえば Under The Radar もたまに聞いてるな。Indie iOS app development の番組なので自分にとってはほんとにどうでもいいけれど、Marco ファン活動。

2016... は書かなかったらしい。2015, 2013.

Dumping Your Brain

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一年以上前にゼロ秒思考という本を読んだ。

この本は、頭に浮かんだことはすぐ書き出せ、そして箇条書きで書けと主張している。

なんでもすぐ書き出せというのは「考えるために書く」に近いものがある。一旦書き出すことで脳の負荷が下がり、考えを前に進められる。

書き出すのは、考えないためでもある。テキスト形式で考え事の snapshot を取って認知的ノイズを捨て、心置きなく先にすすむ。基本的には GTD の人たちがタスクを書き出すのと一緒。ただし中身が TODO である必要はない。

書き出したことの多くは特にそれ以上追求されることなく流れ去っていく。それでよい。Google Photos の全自動 backup が保存やよりわけの悩みをなくしてくれるように、思いつきの書捨ては考え事取捨選択の悩みを減らす。写真と一緒で、頭をかすめるアイデアの大半はゴミだから。

書き出すのは悩まないためでもある。この本は、なぜか対人関係の悩み解決に重きをおいている。対人関係に限らず、悩み事やいら立ちを書き出すのは割と意味がある。多くの場合、思ったより大した悩みではないことに気づいたりするし、なんらかのパターン、バイアスを見出すこともある。自己カウンセリング。認知療法。日記セラピーみたいな。

などなど、色々書き出すのは良い。

箇条書きを勧めているのは、作文のコストを下げるため。文章を考える手間はそれなりにある。箇条書きはそのコストを限りなく下げてくれる。だから考え事をばばっとダンプできる。これは一理あると思う。

著者とちがい、自分はすべてのテキストが箇条書きでいいとは思っていない。説得力やストーリーが求められる文章はある。ただ、それがごく一部なのも事実。大半はたしかに箇条書きで足りる。

なのでババっと箇条書きを書き捨てられる環境を作るのは大事だと思う。ふつうは Evernote でいいだろうけど。

もう一つ、書いたテキストは編集せず新しく書き直すことを勧めている。これも説得された。短いテキストなら過去の残骸にバイアスされず書き直したほうが整理されるよね。

なお著者はこの他にも謎のこだわりを色々持っているが、そのへんは割とどうでもよかったし説得もされてない。あと続編的なのも書いてるけどそれはなぞのランダムライフハック詰め合わせ本で、読むだけ無駄だった。考えるために書く方法論をもっと追求してくれればよかったのに、残念。


考えるために書く、という前回の話の補足として書いてみたけど、あまり補足できてない気もする。

しいていうなら、こうしてダンプされたアイデアのうち興味深いものを書き直してブログにすると良いよ、とかかな。

Giving up "Clean Architecture"

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Bob Martin の Clean Architecture を読んでいたのだが、あまりに価値観が違いすぎる上にその主張の説得力がなさすぎかつすごいエラそうな文章にムカつきが限度に達してしまい、半分くらいで脱落。後半もパラパラ眺めたけど同程度にむかつくかんじだったので自分向けの本ではなかったらしい。

Architecture というのはプログラマの世界ではだいぶ強い言葉で、Architecture だの Architect だのを名乗るなら語られるべきことは色々ある。でもこの本は基本的に依存関係を整理して testable にする話しかしない。Bob Martin はつまるところ SOLID の人なのでそういう話になるのは仕方ないと言えなくもないけれど、そんなら Architecture とか大層な語を使って新刊を書いたりせず昔書いた本を改定しときゃいいともうのだよな。

色々ムカつくところはあるのだが、まず昔話が多い。2017 年にテープの話とか初期の UNIX の話とかを引き合いに出して誰かを説得しようとすんな!昔話から説教に入るとかマジ老害にもほどがある。そしてデータベースは detail, フレームワークは detail, UI は detail, そしてアーキテクチャは detail 無しで議論して細部はあとで決めればいい、とか今時なにいってんだとしか言いようがない。否応無しにフレームワークやクラウドと心中するこの時代、心中したくないなら明示的に心中しないと決断してその agnostics のためのコストを議論しなければいけない。UI にいたってはもうおまえは WebView で Responsive Design でもしてろとしか言いようがない。

読んででここまでうんざりする本は久しぶり。こいつのせいで読書の進みが止まってしまった。真面目に中身を紹介する気になれない(通読もしてないし)なので、真面目な critical review を探してる人は Amazon.com のコレとかを読むと良いでしょう。


自分はオンラインにある Bob Martin の記事を読み、この人とは反りが合わないと薄々感じていた。でも Clean Code(r) なんかはよく必読書に上がってくるし自分も SOLID などを扱う初期の著作にはお世話になったので、食わず嫌いはせず最新作を読んであげようと思ったのだった。でもガチで老害だったわ・・・。老害という単語は ageism なので普段は使いたくないんだけれど、あまりに絵に描いたような駄目っぷりで罵りたくもなってしまうよ。

ただまあ、世の中には反りの合わない人もいるという話なのだろうな。こういうやり方を突き詰めていくことに意味のあるジャンルもあるのでしょう。Piece of mind のためもう Bob Martin には近づかないようにします。


副次的発見として同じ ex-ThoughtWorks 勢でも相対的に自分はまだ Gregor とは気があうと思った。"The Architect Elevator — Visiting the upper floors" とかエラそうではあるけど時代精神を感じるじゃん。

Personal CRM

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二ヶ月くらい前から家族用に Highrise (Free Plan) を使い始めた。

主な用途のひとつは、コクヨ おつきあいノート みたいなもの(こんなものがあったのか!)。要するに親戚や知り合いに何をもらった、あげたなどを記録しておく。もらった・あげたの記録も義理人情の観点で大事といえば大事なのだけれど、そもそも自分はゆこっぷ(おくさん)の親戚や友達の名前とかを全然覚えられない問題があったので、それを記録しておけるのが助かる。Contact List に timeline がついたようなものだと思えばよい。

人付き合いで自分が抱えているもう一つの問題は、人から聞いた話を覚えていないこと。だから聞いた話のうち重要そうなもの(たとえば: 子供が生まれた、その子供の名前、転職したなど) を記録しておくのがもう一つの使いみち。

こういう情報をまったく忘れない人もいるけれど、自分のように付き合いの悪いコミュ障は道具に頼りたい。特にゆこっぷの血縁者や知り合いは自分の直接の関心事ではないせいか、まったく記憶に残らずいつも心苦しかった。Highrise のおかげでだいぶ心的負担が減った。記憶に残らないなら記録に残せ。

入力の手間はある。配偶者の協力が得られないと厳しい気がする。Upfront に大きなコストをかけないよう、ソーシャルグラフのうち実際に interaction のあった相手だけを記録することにしている。つまりアドレス帳のコピーはしない。

自分たちは普段はあまり social  な interaction が多くないので記帳の手間は大したことないけれど、普段からたくさんの人に会ったり色々な会合に顔を出したりしている人は大変かもしれない。一方でそういう人ほど CRM の需要はありそうだが。まあ世の中 CRM が脳に内蔵されていてたくさんの人間関係を苦もなく manage できるひとっているよね。

Highrise はこの目的に最適なツールだろうか。わからない。紙の台帳よりいいのは確かだとして、世の中には CRM が山ほどある。自分は他に Monica を試した。Monica は営業やサポートではなく個人の人間関係の管理に焦点があり、この目的には向いている。ただ自分が試した時点では基本的な機能がだいぶ足りていなかったので諦めた。ただしその後ちまちま機能は増えてるっぽい。他の CRM は多くが営業活動支援に特化しすぎていて、家族のおつきあい帳には向いていないように見えた。ただ試してみたら案外いけるかもしれない。

Highrise の free plan は 250 contacts が上限。その上限に達したらどうするか、は考えていない。まあ上限に達するくらいマメに使えていたなら金を払っていい気もしている。やや高いけど。

どの道具を使うかはさておき、CRM でつきあいを管理するのは結婚してすぐやっておけばよかったと思った。様々な awkwardness や embarrassment を回避できたに違いない。家事の mental overhead をテクノロジで乗り切れるとよい。

 

Feedbin

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ここ二ヶ月くらい Feedbin を使っている。Indie Web を応援してやるかという気持ちと、ニュースサイト以外の情報流入経路もほしいと思ったため。キラー機能としてメールベースの newsletter を購読できる。自分は inbox の汚染がいやで一旦 newsletter 類をぜんぶ unsub したのだけれど、Feed reader で読めると inbox 汚染の問題はなくなるので良い。モバイルは弱い、が、スマホの暇つぶしには事足りているので特に Feedbin を使いたいとも思わないのだった。

暇つぶしに事足りているという点でいうと、そもそも Blog とか Newsletter とかを読む暇あるのか。まあ、割と無い。寝る前とかにバーっと既読にする感じで、文章はそんなに読まないし、リンク集的 newsletter のリンク先を読むこともほとんどない。虚しいが、フィードの消化とはそういうものだった気もする。ニュースサイトにバイアスされず、Nuzzel のような social media aggregator とも違う切り口で読み物を拾えるのは悪くない。知り合いのブログも読めるし。知り合いのブログは日本語なせいもあってだいたい読んでる。

知り合いといえば Twitter も RSS 経由で読むことにした。自分は知り合い 2-3 人の動向を知りたいだけなので今までは twitter.com/username をブラウザで眺めていたのだけれど、今は FetchRSS の無料枠を試している。(似たようなサービスとして TwitRSS というのもあったが試していない。) 。特に素晴らしくもないけれど、用は足りる。


結果として今の自分のひまつぶし/情報フィード源は: Hacker News (最近は hckrnews という alternative frontend で見ている), Nuzzel (前書いた), Feedbin, NYTimes といったところになっている。たぶん NYTimes を一番みてる気がする。ぜんぜん tech じゃないけど。

Nuzzel の follower は自分の関心の推移に合わせて足し引きしたほうが良いのだろうと思いつつ、あまりきちんとは保守していない。Nuzzel 専用のアカウントを使っていて、操作が面倒なのだよね。基本的には Twitter ヘビーユーザ向けの道具だと思う。

Book: Information Theory: A Tutorial Introduction

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Information Theory: A Tutorial Introduction: James V Stone: 9780956372857: Amazon.com: Books

というわけで読み終わった。

エントロピー入門。難しい証明はせず、ちょっとした式変形ですむ証明はしつつ、解釈や直感的な理解に重みをおいている。真面目なやつを読みたい人は真面目なのを読むのが良いと思うけれど、自分はこのくらいでよかった。200 ページくらい。

最後の二章は物理学、脳生理学におけるエントロピーみたいな話。あまり真面目には追わず流し読み。Maxwell's Demon とか、そういえばなんか聞いたことあるねそれ・・・みたいなかんじ。

Entropy というものを完全に腑に落とせたかというと no だけれども、式をみてもビビらないようにはなった。ただ entropy とか logit をつかってなんかやる系の計算にはしばらく近づかない気がするので無駄といえば無駄。気を済ますため、納得税としての読書だったとは思う。まあ納得税率高めな性格のため仕方なし。

 

Book: Learning TensorFlow

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Learning TensorFlow - O'Reilly Media

O'Reilly が subscription に移行する直前くらいにゲットしたベータ版を読み終えた。

薄いのがよい。200 ページくらい。そして基本的に TensorFlow の話しかしない。機械学習のベストプラクティスとかはナシ。そういう話を他で散々読んだ身としては良い塩梅だった。

カバーしている範囲はだいたいオンラインの TensorFlow のチュートリアルガイドと同じくらい、か、ちょっと少ない。本という体裁で読めるのは良い。説明も若干丁寧。コアにあるオブジェクトモデルとかを説明してくれる。かわりに入り組んだ新しいモデルの解説などむずかしい話はない。ところでひさしぶりに公式資料を眺めたんだけど、とょっと増えてる気がするね。

オンラインのチュートリアルとかぶらない部分もある。たとえば high level API として Keras や TF-Learn の章がある。ただまあ、こういう high level API は high level なだけあってオンラインの資料で足りる印象。すぐ変わるし。

オンラインの資料を順番に読んでくのがかったるい人には良い本だと思う。一通りオンラインの資料を読んで理解した人、もう hello world より先まで触っているひとは読まなくてよさげ。

ベータ版なのでコードは若干あやしげ。まあ出版される頃には直っていることでしょう。

Book: Python Machine Learning

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Packt, Amazon, Play.

Scikit-learn の使い方が知りたくて読んだ。TensorFlow は cross validation とかを手伝ってくれないので別の道具がほしかったのと、 Keras が scikit learn 互換だと何かで読んたため。

Scikit-learn を知るには良かった。知りたかったこと (Pipeline の使い方や GridSearch などの話題) がきちんとカバーされていた。コードは割とちゃんとしていると思う。著者は scikit-learn にちょこっとパッチを書いたりもしているらしい。

Machine learning 自体の学習にはいまいち。アルゴリズムや数式の説明の仕方がよくないと思う。知ってる人の復習にしかならない。アルゴリズムの説明は飛ばし読み。そのほか Web アプリを作りましょう、みたいな話も飛ばし読み。最後にでてくる NN の話はスキップ。

Coursera ML の後すぐに読めばよかったと今更ながら思った。 Ensemble 系以外はだいたい同じ話題を扱っている。これを読んでから Kaggle をやっていたらもうちょっと手を動かせたかもしれない。


そのほか。

Matplotlib 習熟の必要性を感じた。今のところ自分は Pandas の DataFrame.plot() でなんとか可視化をやりすごして来たけれど、それより numpy の array をズバっと描けるようになった方が柔軟で便利そうだと文中に登場する数々の matplotlib チャートたちをみて思った。

NN で扱うようなメディアや非構造データ自体を plot することはあまりなさそうだけれど、loss の変化とか gradient の norm とか plot したいものはなにかとある。Tensorboard でもいいのかもしれないけど、記録をとるには Jupyter に埋め込める Matplotlib が必要そう。どうやって練習しようかね。この本のサンプルコードを写経でもすべきか・・・。

Scikit-learn. 一通り色々実装されてるのはいいんだけど、ほんとに NN と一緒に使えるのだろうか。なにかとデータを全部メモリに乗せたがるし、トレーニング結果の check-pointing もなさそうだし、いまいち頼りない感じがする。でもみんなこれ使ってるんだよね?なぞ。

 

Book: Programming In Haskell

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Amazon, Play Books

なかなかよかった。なにより薄い。はじめて Haskell の本を読みきれた気がする。章末問題がよくできていて、途中まではちょこちょこ解いた。仕事がはじまってからは諦めた。もう少し解いた方がいい気がするが・・・。

Haskell, 相変わらず実用性を感じないけれど。一方で昔ほどは理不尽にも感じない。そして Rx など Haskell 発祥の技術が流行ってきたせいで、なるほどアレがコレなのかという発見がある。たとえば Erik Meijer が Rx だけでなく async/await を推した理由も、要するに do/return が欲しかったのか、みたいな。

例題にでてくる Monadic Parser みたいのを見るに、もしかしたら Kotlin の suspend method もうまくつかえば単純な非同期だけでなく monadic parser みたいのを作れるのかもしれない。パーサのコードはまっすぐに書き、しかし pull based でうごく XML parser みたいな。10年前に欲しかった・・・。

一冊流し読んだだけだとウンチクは溜まれどコードを書けるレベルは程遠い。せっかくなので もうちょっと周辺を読んでみたいけれど、あとがつかえてるのですぐには無理。でも気が向いたらなんかもう一二冊読みたいもんです。

Book: Kotlin in Action

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Kotlin in Action を読んだ。けっこうよかった。

Kotlin はさして難しい言語ではなくオンラインの資料もあるので、本を読まずに適当にサンプルとかを真似ながらでも割と使える。なのでひやかし目的なら本はいらないと思う。Scala をやったことがあれば特に。

自分は育児の気晴らしで小さいアプリを Kotlin を使って書いている。そういう風に実際に使うとなるともう少し深く理解して損はなかろうと読んだ。その期待には答えてくれた。この本は丁寧に書かれているし、Kotlin の中の人が書いており authoritative という意味でも安心。1.1  の内容も少しだけ触れている。ただ async/await はでてこない.


Kotlin それ自体について。

モダン言語を一通りひやかした人にとって新しく学べる概念などはまったくない。だいたい Scala の無難でオーバーヘッドの少ないところだけ持ってきたようなデザインだから、サーバ側でわざわざ Kotlin を使うメリットは感じない。一方で Android プログラミングにおける Java の残念さをだいぶ打ち消してくれるので Android プログラマ的にはキラー言語だと思う。Kotlin の開発陣も Android での用途を重く見ているのは各所から感じる。

一通りチュートリアルを冷やかしただけだと気づかない面白い機能、いちばんは inline まわり。

まず inline function に渡した lambda の中で return すると、lambda  ではなく外側の inline function から return できる。まじで?おかげで inline function を制御構造に使う柔軟さが増す。Python にあった StopIteration を throw するダサさがない。でもちょっと狂ってるよな。

Inline function の reified type. Java の generics は type erasure で実行時には型が消えてしまうのだけれど、inline function では型の中身に依存できる。たとえば generic class を new できる。まじで?たしかに便利で、ライブラリたちも reified type に大きく依存している。

Outer return にしろ reified type にしろ、Kotlin の inline function は C++ のような単なる高速化のヒントではなく異なる機能を持っている。ちょっとぎょっとするけれど、便利でもある。

そのほか面白かったのは Java クラス相手の nullable の扱い。Nullable の概念がない Java からきた API は引数も戻り値も全て nullable にするのが理論的には正しい。ただ実用的にはかったるすぎるので、それらは platform types という特別な型になる。Platform types は Kotlin 側では Nullable としても Non-nullable としても宣言できる。 けっこう大胆な判断だけれど、まあ悪くない感じ。

個人的には nullable type はあってもなくてもいいと思っているけれど、Null handling まわりの頑張りで便利になってるのも事実だから嫌いではない。CoffeeScript 由来の safe call とか、ふつうにいい。

あとは細かいけど lambda に receiver を渡せるのも気の利いた syntax sugar だと思う。

全体的に無茶せずバランス重視でストレスのない言語だよ Kotlin. Java 混ぜるのも簡単だし、もう余暇アプリはぜんぶこれでいいわ。新しく学ぶ概念がないのは少し退屈だけれど、それは他でやります。

Chromebook Plus

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買った。普通のブラウザ端末、および PDF論文や ebook の読書端末として使おうと思っている。ペンは今のところ使う予定なし。

ブラウザ

すごくちゃんと動く。Chrome OS は Chrome が一番正しく動くプラットホームなので当たり前なのだけれど、普段 Ubuntu というマイナー環境で Chrome を使ってるので差を実感する。比べると Chromebook は全然バグっぽい動きをしないからね。Chrome OS も Ubuntu も Linux じゃん、というかもしれないけれど色々違うのだよ。

欠点。遅い。我慢できない遅さではないけど、速いPCでの動作と比べてキビキビっとはしてない。

普段つかってる XPS13, Macbook Pro, Chromebook Pixel らはみな Intel の速い CPU を使ってるのに対し Chromebook plus は謎の ARM. CPU/GPU 自体の遅さもあるだろうし、 ARM 向けの Chrome OS はまだ Intel 向けほど頑張ってないのかも。

PDF

PDF や ebook はフリップしたタブレットモードで使いたい。現状の出来はいまいち。我慢できるけど慣れと工夫が必要。

まず最初は Chrome 組み込みの PDF ビューアを使おうとした。が、遅すぎてだめ。適当な Android アプリとして Xodo Docs や Google Drive を使ってみる。こいつらは速い。

ただキーボードをフリップした tablet モードと Android アプリ、かつ画面を縦(portrait)にして使うという組み合わせが色々辛い。欠点をあげるとキリがないが、たとえば縦画面にしたときたびたびアプリのウィンドウサイズがおかしくなる。これはたぶんバグ。アプリ切り替えでアプリの動作が不安定になる。これはバグ。フリップした状態でアプリを immersive mode (fullscreen) にする方法がない。これはデザインの欠陥。画面回転のロック設定を、キーボードモードに戻した途端忘れてしまう。たぶんバグ。フリップ状態で Android のように電源ボタンを押してもサスペンドしない。Chromebook は laptop を閉じることでサスペンドする前提だから。

これらはみな根本的な欠陥というよりやる気不足だと思うので, 開発陣が Android タブレット代替品としての Chromebook に本気になれば直ると思う。本気になってほしいなあ・・・。Chromebook は Android と違って新しいソフトウェアのバージョンが継続的に降ってくるから、一年後には半分くらいの問題は直ると期待しつつ我慢して使おう。

E-Book (Play Books)

贔屓目承知でいうと、割といい。これは別にアプリの出来が特別良いという話ではなく、PDF を読む上で最大のフラストレーション要因である portrait な画面の振る舞いから影響を受けないから。EPUB は画面を landscape にしたまま読める。しかも landscape だと 2 ページ同時になる。これがすごくいい。ただし画面の向き以外の問題点は共通。

そういえば Android アプリなのになぜかキーボードでページが送れる。なので laptop モードでも結構使える。ここはよくできてるなと思いました。

画面

12-inch で 2400x1600 の画面。これは良い。ブラウザで使うときもいいし、何かを読むときはすごい良い。この画面サイズと解像度があるから様々な欠点を我慢してでも使おうという気になる。

Flip と Friction

自分にとって初の画面をフリップできる端末。タブレットになる!と思ってたけどそういうものではなかった。iPad にしろ Android にしろ、タブレットなら読み物をするとき 1. 手にとって 2. PIN/指紋 でログインして 3. アプリのアイコンをタップして, 4. ここで読める. 一方 Flip だと 1. 手にとって 2. 画面を開き, 3. キーボードからパスワードをタイプしてログインし, 4. 画面をフリップし, 5. 画面回転をロックし, 6. アプリを起動, 7. ここでようやく読める. 読むまでの friction が多すぎ。

モバイルデバイスたちは friction 削減に血道を上げているのに対し, laptop は腰を据えて使う前提だから friction には甘えがあると思う。スキマ時間にちょっと本を読むみたいな用途に使いにくいのは不満。


どうやって既存の端末たちと住み分けていくかなあ。ブラウザがきちんと動き、かつキーボードがついており、かつコードはかけない。ブラウザを使うぶんには XPS+Ubuntu の細かいイライラがないぶん良い。あと高解像度大画面で活字を読む気分は良い。ということを考えると Chromebook Plus は blog を書いたり電子書籍や PDF を読むのに使っていこうか。つまり当初の予定通りか・・・。

また半年くらいして感想を書きたい。

Fluent Python

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Amazon, Play Books

余暇に Python を使っている都合から読んだ。なんとなくでしか Python を使えない人向けに、もうちょっと真面目に理解すると色々良いことあるよ、というスタンスで書かれた本。自分は書捨てのぶんにはなんとなくの理解でいいと思いつつ、ライブラリなどオープンソースのコードを読むとわからないことが多く苦労していた。この本のおかげでその不安が和らいだ。

トピックの選択が見事。自分が知りたいと思いつつ面倒で放置していた話題を軒並みカバーしてくれている。具体的には Unicode, generator, metaclass. それ以外にも色々知らないことがあった。自分は Python について、今となっては特に新しいところのない退屈な言語という印象を持っていた。「新しいところがない」という部分の印象は変わらないけれど、退屈というほどで もないとわかった。それなりにモダン言語として歩みを進めている。

全編 Python3 を前提に書かれている。自分はもともと Python3 にまったく興味がなかったけれど、読後はもうぜんぶ Python3 でいいと意見を改めた。色々新しい機能が入っているし、Python を前に進めたいという著者の熱意に影響された面もある。Python への愛と熱意がページの端々から伝わってくる。

自分のような Python 初心者が次のステップに進むのを助ける良い一冊だと思う。Python で少しは良いコードが書けそうな気になれた。