名ばかり TL
一年足らずで逃げ出すことになった前のチームに応募した動機の一つは、TL のような leadership role というやつをやりたい気がしたからだった。自分の職位は TL 的な役割を期待されているものの、これまではなんとなく回避していた。ただ一人でなにかやるのにも限界を感じ、もしかしたら leadership とかあるといいのでは・・・?などと思いたった。
求人要項は TL 的な役割を求めており、実際異動してみると社内名簿に "TL" というバッジがついた。(アホくさいけどそういうのがあるのです。)
チームには既に古株の TL がいて、この人は若者の世話からプロジェクトの提言まで幅広くやる、言ってみれば本物の TL だった。ただ仕事量が多すぎ本人が重要なプロジェクトに集中できないので、自分にその負荷をいくらか引き取ってほしい期待を感じた。
ただやってみると、自分は TL からは程遠かった。なんといってもコードのことが全然わからない。規模が大きいし歴史もあるし、関係者もいっぱいいて、プロセスも色々ある。しかもアーキテクチャが割と独特で、組織非依存な Android 基礎知識みたいのがあまり役に立たない。そんな身に TL 的仕事をしろと言われても無理がある。
たとえばチームには office hour というのがあって、隣接チームの人がアプリのコードに関する質問を持ってやってきた。こういう変更をしたいんだけど、アーキテクチャ的に整合性ある?どこをいじったらいい?そんな質問に TL 氏は次々と答えていく。自分はというと、わからない。明らかに筋悪なやつは別として、変更の良し悪しなんてわかりはしないし、疑問にも答えられない。同じような問題が design review にもある。サーバが返す proto の schema これでいいかしらと言われても、何も判断できない。
仕事を通じて理解を深めたいところだが、手元にやってくるのはこれまでの自分の経験をあてにされた Android 固有のものばかり。そういう仕事だとアプリ固有のドメイン知識は積み増せず、システムを俯瞰する視座は1ミリも深まらないまま時間が過ぎていった。
事後的に見ると期待値に無理があった。職位が足りても文脈が皆無じゃ役に立てない。新しいプロジェクトでもない限り、TL は職位で選ぶよりきちんとドメインを理解した生え抜きにやらせた方がいいんじゃないの?この無茶な期待に答えられる賢い人々もいるのだろうけれど、自分はその手の有能人材ではなかったよ。
有能人材の皆さんはどうしてるんだろうね。というと、俯瞰に時間をかけているのだろうな。ただ実際のプロジェクト作業なしに資料やコードだけから十分な理解を得らえるのか。自信はない。資料もコードも右目から入って左目から出ていくばかり。
しばらくの間は役に立たない名ばかり TL であることを受け入れ、時間をかけ経験を重ねることもできるかもしれない。つまり TL 業務はさておき「実際のプロジェクト作業」をこなす。これは「しばらく」の長さによってはアリ。だが、自分は一年近くたった後も大した進捗を感じられなかったので、「しばらく」は 2-3+ 年かかりそうである。名ばかり営業中に次のレイオフが来たらクビになっちゃうよ。
しかも 2-3 年かけるなら生え抜き non-TL の皆さんも経験を積んで TL になれるじゃん? それなら、やはり生え抜きを TL 見習いに抜擢したほうが良い気がする。
これを踏まえると「しばらく」は一年くらいが限度。だから外様 TL を雇うなら、飲み込みの早い有能人材必須。でもさ、そういう有能さなんて傍目にはわかんないですよね?(ごめんね!)
結論: 有能人材はさておき自分は異動と同時に TL するべきではなかった。苦労はしたし迷惑もかけたが、身を持って結論を出せたのは良かった。