Spinach Forest

April, 2021

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最近聴いた本

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Working Backwards: Insights, Stories, and Secrets from Inside Amazon

Amazon の初期の偉い人が The Amazon Way を逸話混じりで語る本。The Amazon Way も各種エピソードも面白かった。

Working Backwards という慎重さはソフトウェアだけでなく流通とか手戻りコストの高い部分がビジネスにあるからこそ有効だと思うが、一方ででかい会社はどこもなにかしらそういう部分があるので、会社がでかくなった時にきちんと機能する慎重さを持っているのは強い。ふつう慎重になると麻痺してしまいがち。あと single threaded leader とかも面白かった。片手間で仕事進まないとかあるあるすぎる。スライド禁止の話も、ほんと勤務先の連中に言ってやってくれと思う。ただ下々には six-paper の大げささが必要な場面はそんなにないだろうと思う。重要なビジネス意思決定のための決闘資料だな。Output でなく Input を見るというメトリクスの話はなんともすごい先進的で、はー・・・というかんじであった。そういう proxy で大丈夫と言えるのは、なんかあるよなあ。

こういうプロセスを敷けば Amazon じゃなくても成果が出せる、というわけだが、そこはんなわけねーというかんじ。一方で ex-Amazon の人というのはいっぱいいるはずで、そういう人が牛耳ってる会社だと似たような感じになる気もして、どうなのだろうね。Seattle の方にいけばそういう会社いっぱいあるのあろうか。Bay area だとそれこそ ex-G なり ex-F なりの会社はいっぱいあって、そういう人は程度の差はあれ元勤務先-way を持ち込むものだが。

それにしても Amazon ちゃんとしてんなーと思う。たとえば Google について書かれた本を読むと、こいつら楽しくやってんなと思うことこそあれこいつら儲かりそうだなという感じはない。従業員体験は重視してるが株主利益や顧客利益についてはあまり話がでてこない。そういうのがいいと思っていたこともあったが、すくなくとも現状を見る限りでは Amazon Way の方がだいぶ上手く行っている。

なぜなのだろうね・・・と考えるに、ゼロ年代というのはインターネット黄金時代で、掘れば掘るほどあたりが出た。だから熟考して手を打つより色々やってみる方が良い面があった。でもその黄金時代は 10 年前に終わってしまい、真面目に考えてやらないといけないという(普通の)世界になった。Google Way はゴールドラッシュに乗るのには向いていたが、そのあとは厳しかった。

あるいは DHH のいうように産油国だった、ということなのかもしれない・・・と書いたが、金を石油に置き換えればだいたい同じ話だな。関係ないけど DHH, Hey の宣伝もかねてぼちぼち blog 書いてるじゃん、ということで sub しておく。

Never Split the Difference: Negotiating As If Your Life Depended On It

引越しに際し大家とのメールでだいぶ消耗したので、そういうのに消耗しないようになりたいなと読む。Crucial Conversations みたいな話だが、FBI の身代金交渉人という著者のバックグランドにバイアスされたツイストとポップカルチャー的な雑さが新鮮だった。交渉テクニックの話以前にでてくるエピソードがぜんぶ凶悪犯との身代金交渉なのでめちゃ面白い。

読んだあと、自分が日々面している交渉相手は大家より我が子だなと気づいた。そして子供との会話は理不尽さとか感情的っぷりが身代金交渉に通じるものがある。心を落ち着けて挑みたいものでありますな・・・。

Insight: The Surprising Truth About How Others See Us, How We See Ourselves, and Why the Answers Matter More Than We Think

内省ってあんまし役に立たないよね、というような話。日記をながなが書くとか無意味な自己非難で鬱っぽくなってしまうよねとか。そういえば CBP とかそういう話だったな・・・と思い出す。そんではどうしればいいかというと、信頼できる相手に的を絞った問いを投げかけなさいね、という話をしている。自己啓発ジャーゴンでいうところの Personal Board Of Directors というやつに近い。(このジャーゴンどこ発祥なのだろうな・・・)

Caffeine

カフェインに関する雑談。Audible Original というやつで、Audible にしかない。割とどうでもいい内容だけど二時間くらいなので、長い podcast だと思えば悪くはなかった。

The Tyranny of Merit: What's Become of the Common Good?

実力主義がはびこってしまったせいで、世の中ずいぶん生きづらくなっちゃったよね、というような話。実力主義の高学歴者が回りにいる身としては、そうですね、と思う。アカデミアの哲学者だけあって・・・というか Sandel は名が知られてるだけあって書き手として優秀で、過去の哲学的解釈とかもレビューされており、よくかけてる。説得された。

The Enchanted Hour: The Miraculous Power of Reading Aloud in the Age of Distraction

読み聞かせの意義を説く本。巻末の子供の本リストは参考にして何冊か買った。

Revisiting Caffeine

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カフェインをやめて半年以上たつ。Why We Sleep を読んでやめて、WFH のストレスで再開し、しかしまた caffeine crash がおきたのでやめ、今日に至る。厳し目のドライブ(山道、長距離)がある日は一杯だけ飲むことにしている。

しばらく厳し目のドライブがなかったあと、こないだ Yosemite に行った折に行き帰りに一杯づつ飲んだところその威力を痛感。もうちょっと仕事の足しになるよう使えないかなーと考え始める。

うかつに再開しても crash するだけだしなすこし調査でもするかとまず Caffeine という薄い audiobook を聞く。これは単なるうんちく本で意思決定の役には立たなかったが、著者がカフェイン断ちをしてみる下りが長々書かれていて微笑ましかった。もうちょっとなんか本ないのかな・・・と探すも、よさそうな本が見当たらない。辞めたい人向けの話はあるのだが、こっちはもうやめてんだよ。

そんななかふと Confessions of a Caffeine Addict というカフェイン中毒者互助団体談話集みたいな本が目に入ったので気まぐれに読んでみた。が・・・やべえー!カフェイン中毒やばい!アル中とか他人事すぎてあまり共感がないが、カフェイン中毒は他人事じゃないエピソードもある。コーヒーがぶがぶ飲みながら働いてたら病院運ばれた、とかプログラマそういう人いそう。そして副作用。腹痛、下痢、胃潰瘍、頻尿、不眠、不安、短気、手の震え、などなど一時期の自分として身に覚えあるわ!おまえだったのかカフェイン!たぶん濡れ衣も混じっているけどいま全部ないもんな。

そのほか Soda (Coke) 依存や Caffeine Pill, energy drink 依存の人もでてきて、これもプログラマにいそう。というか一時期 soda addict 手前だったことがあるような自分・・・。


やっぱりカフェイン復帰とか気の迷いすぎるのでは?と思う一方、さすがにこの談話集は極端すぎるだろうと気を取り直し、本は諦めてインターネットを探す。コーヒー屋などカフェイン業界の息のかかったサイトに SEO されまくっておりいまいちいい情報がないなか、なんとか Mayo Clinic, Science Direct, NIH とかまともっぽいサイトの記事に一通り目を通してざっくりと理解を正す。

とりすぎのダメージなしに向精神作用を仕事に活かせるようカフェインを摂取することは可能なのか?どういうメンタルモデルで考えればよいのか?

  • カフェインは addiction (reward system への介入) はないが dependence (withdrawal symptom) はある。この区別に実用上どのくらい意味があるのかわからないが、ざっくりいえば他の薬物よりハマり度は低いがハマることはある。
  • Withdrawal symptom はカフェイン摂取を三日続けたあたりで発生する。
  • Tolerance があり、日常的に飲んでると段々効かなくなる。つまり効き目を維持しようとすると段々量が増えていく。ただし安全な量の範囲であれば完全に効かなくなることはない。
  • 「安全な量」の目安は 400mg/day 以下で、これはいわゆる "4 cup ぶん" だが、ここでいう 1cup は 150ml くらいなのでふつうのマグ (300ml) だと二杯。まあそんなものだろう。そして個人差はあるという。
  • Tolerance ができるので、心拍への影響などは長期的には無い、らしい。はっきりしないこと: 全ての作用・症状に tolerance があるのか。つまり副作用も体が慣れて小さくなるのか?というと、たぶん tolerance ができるものもあるしできないものもあるのだろう。つまり徐々に摂取量を増やし続けていくのは、バーンと急激に増やすよりは安全だが、完全に安全ではなさそう。
  • Tolerance の獲得にかかる時間は・・・よくわからないが一日から数日とされている模様。
  • 副作用の中でも睡眠へのインパクトが一番懸念されている。なので tolerance があろうがなかろうが午後は飲まない方が良い。
    • カフェインのせいで寝不足になり、その眠さを誤魔化すためにまたカフェインをとる、とか悪循環。
  • Withdrawal symptom は最後のカフェイン摂取から 12-24 時間後くらいに出てくる。つまり・・・ランチの時にカフェインをキメると寝不足じゃなくても翌朝は厳しいのでは?
    • はっきりしないこと: Withdrawal symptoms と Tolerance は関係があるのか、つまりたまに一杯飲むだけの人も withdrawal symptoms があるのか?Anecdotal には withdrawal symptoms と tolerance の強さは相関するように見える。
  • 徐々に量を減らしていけば Withdrawal symptoms は回避しつつ quit できる。


といった前提でいくつかの摂取パターンについて考えていく。

  • 一日コーヒー一杯 (カフェイン 200mg) 摂取
    • Pro: Tolerance はできるので最大の効果が得られるわけではないが、何らかの効果は得られる。
    • Pro: 午後は飲まないことにすると睡眠へのインパクトは、ゼロではないが控えめ(ほんとに?)
    • Con: 最大の効果が得られるわけではない。
    • Con: 翌朝が withdrawal symptoms で厳しい。
    • Con: 同様に withdrawal symptoms を防ぐために毎日飲まないといけない。
    • Con: 午前中のみ、所定量のみという決まりを毎日守り続ける規律が必要。
  • 期間限定で Tolerance を上書きしつつ毎日飲む:
    • Pro: Tolerance を overdose で克服できるため、効能が最大化される。
    • Pro: 期間が済んだら quit できる。
    • Con: 睡眠へのインパクトは、所定量で飲むより多そう。心配。
    • Con: 副作用も避けられるか不安、というかたぶん副作用あるね。
    • Con: Quit するのはそれなりに大変。
    • Con: 「期間」をどう定めるかが不明。なんとなく一ヶ月くらいなら乗り切れる気がするが、あんま根拠なし。
  • 週に一回、コーヒー一杯 (カフェイン 200mg) を摂取。(今やってることに近い)
    • Pro: Tolerance ができにくいので、いつも最大に近い効果が得られる。
    • Pro: 睡眠の問題もほぼなさそう。
    • Con: 効き目を得られるのが週に一回だけ。
  • 週に三回くらい、コーヒー一杯 (カフェイン 200mg) を摂取。
    • Pro: Tolerance は、週一回よりはできそうだが隔日ならたぶん under control にできる。Withdrawal syndrome も同様。
    • Pro: 週に三回効き目が得られる。
    • Con: Tolerance / Withdrawal Symptom 獲得までのマージンが薄い
    • Con: 週三回というリズムは週一回とくらべ実施がトリッキー。

とすると・・・

  • 一日一杯モデルは、規律を守るのが自分にはきびしそう。
  • 期間限定モデルは、基本的にはダメだがたとえばクビになって就職活動するから LeetCode をやる、みたいな時にはいいかもしれない。というかクビに限らず仕事のオフシーズンにそういう短期集中トレーニング系をやるにはいいかもしれないな。魂削りそうだけど。
  • 週に一回モデルは、今やってることをもうちょっと explicit にするかんじ。週末きびしいドライブがなかったら月曜日に一杯キメて良いことにすると、今よりもうちょっと恩恵を受けられる。
  • 週に三回モデルは、これより多くキメられる。しかし週一回よりは意思の強さを要する。危うさに近づいていく漠然とした不安ある。

何事も節度を持って楽しめる人とそうでない人がおり、色々な事例から自分は節度を保てないサイドであることがわかっている。攻めないほうが良い。週一回が無難。もうちょっと踏み込んで週三回。あいだをとると平日一回週末一回で、週末のまなかったら月曜に一回、とかそういうかんじかなあ。あるいは子と添い寝をした翌日のみ、とかだろうか。子と添い寝した翌朝はジョギング実施に失敗しがちで脳内麻薬不足気味だし、これがいいかもしれないなあ。


ところでプログラマというのはコーヒーをコードに変換する機械と自称することがあるくらいカフェインキメキメな職種である。先の中毒者談話集を読んで思ったこととして、ステレオタイプ的プログラマの生態や言動は、実はカフェインの副作用として説明できるものも多いのではないだろか。Night owl で朝おきられないみたいなわかりやすい例だけでなく、いわゆるイキリオタク的なヒステリック会話スタイルみたいのも、妙に集中してコード書いてて話かけても反応ないとかも、カフェインキメ過ぎによる narrow-focus, short-temper で説明できる・・・ときもあるんじゃないの?そういうのは personality として済まさずとりあえず一旦カフェインを止めてみると明らかになることもあるのではなかろうか。余計なお世話だが。

まあキメキメ勢を横目に見つつしばらく自分は週に 2-3 杯で暮らしていこうと思います。なお今日は山道ドライブがあったのでランチのときに一杯キメているが、案の定眠くならない。やっぱ睡眠への影響あるんじゃね?

In HN

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最近日本語のウェブを見すぎて精神衛生を損ねてよくなかったと反省し、ずるずる見るようになっていた日本語のウェブを見るのをやめた。ただ英語圏は見ているだけだとなんか寂しいというか、あまりに盛り上がらない。ので HN にコメントを書く試みをはじめている。

最初のきっかけは NYT をやめたついでに読むもの探しをしようと Ask HN したのがきっかけ。これがまあまあよかった。

英語のウェブは言語障壁のおかげで感情を害しにくいのが良い。勤務先の残念事例、および逆に不当なディスられ、はそれなりに心が傷まないではないが、そういうのはスルーしてもっとどうでもいい話にどうでもいいコメントをつけていきたい。カルマ貯めるぞ、みたいな。

しかしブラウザネタしかコメントすることがない現実はだいぶイマイチだなあ。もうちょっと乗っかれるテックな土俵を増やしていきたいもんである。Android ネタとかまったくないね HN.


追記

その後もチマチマとコメント活動を続けた結果カルマが 100 を超えた!というあたりで我に返る。なにやってんだ自分。いつの間にかカルマを稼ぐ gamification にハマっていた。なにか言いたいときにだけ書くようにします。たまに雑なこと書きすぎて downvote されたりもするけれどあたしはげんきです。

ただまあ、会話に参加する楽しさってあるよね。HN は follower とかいないし自分も存在感ゼロだし、Twitter よりこっちの方がいいな。時間の無駄であることに代わりはないが。

追記 (11 月)

その後もたまになんか書いたりしていたらカルマが 700 を越えました。hahaha.